経営ノウハウ(4)

(136)『組織に活力を与える12ステップ』

経営方針とは
あるべき未来を実現するために、この1年の戦い方を共有すべきものである。不透明だからこそあるべき姿を明確にし、組織に活力を与える必要がある。

 

ステップ1 存在価値の再確認
わが社がなくなれば誰がどのように困るのか。この1点を常に明らかにする姿勢が方針策定のスタートになる。
ステップ2 ビジョンの設定
あるべき姿を具体化する。企業経営は厳しいマラソン競争であるが、ゴールのないマラソン競争が存在しないのと同様、目的なき経営があってはならない。
ステップ3 先見する
過剰と不足、主役交代などの変化・進化の潮流を正しく認識する。
ステップ4 現実の直視
顧客は変化、進化する以上、企業価値と顧客価値には常にギャップが生まれる。この事実から経営者は逃げてはいけない。
ステップ5 目標の設定
設定目標は2つ。1つは中長期的な到達目標。そしてもう1つは短期的な勝てる目標の設定である。中長期ビジョンの実現には、勝てる組織が必要でなる。それは勝ちグセから生まれる。なぜなら勝つことにより強くなるからである。
ステップ6 戦略の策定
どのポジションでNO.1となるかを明確にする。そのために「やらないことを決める」ことが欠かせない。これが戦略である。
ステップ7 組織化を行う
組織は戦略に従う。誰がやるかを明らかにする。
ステップ8 年度経営方針の策定
上記7つのステップを踏まずして策定した経営方針で、1年間組織が戦うことは難しい。
ステップ9 実行具体策の策定
具体的ステップと6W3Hは欠かせない。この際、大切なのは『プラン2』の準備である。これから実施する具体策を『プラン1』とすれば、それで達成できない場合の策。それが『プラン2』である。
ステップ10 方針管理の実施
少なくとも四半期に一度は方針管理を実施し、進捗状況を正しくチェックしなければならない。
ステップ11 修正と実行
目標未達の場合は、直ちに『プラン2』を実行に移さなければならない。 方針書は作品ではなく、目的達成の手段である。
ステップ12 信賞必罰

★構造転換期において、正しく方針を策定・運用する企業が「勝ち組」となるのだと認識したいものである。

 

(137)『"原因"と"手段"でピントを合わせよう!』

★部門方針、個人取り組み事項を作成する際の注意点を紹介したい。

会社の方針には「中期ビジョン」→「年度方針」→「部門方針」→「チーム方針」→「個人取り組み事項」という流れがある。

まずは「中期ビジョン・年度方針」と「前期の部門の反省」を踏まえて落とし込んでいく。
その反省時、"原因"と"結果"でとらえることがポイントである。反省の多くは、「売上高が昨対95%と未達であった・・・」とか「粗利益率が○○%と低迷した・・・」という"結果"ばかりを注視した内容になっているが、本当に大切なのは"原因"である。 それを反省欄に記入し、来期の対策へと活かすのである。

取り組み事項(実施事項)におけるポイントは、"手段"と"目標"で押さえる。
取り組み事項(実施事項)を作成するとなると、"目標"ばかりを記入する人が多く、その手段がよくわからな いケースが非常に多い。 例えば、「新規開拓○億円」、「新規訪問○件」、「コストダウン10%」等々。意気込みとしてはよくわかるが、上司やトップはどうやって達成しようとしているのかが一番知りたいのである。『"手段(プロセス)"がわからないのに、"結果"は信じられない』である。

★来期、何を重点に動くか?会社の利益向上のために、今、何が大切か?また、どうしたら持てる力を発揮できるか?──"原因"と"手段"を踏まえて考えていただきたい。

 

(138)『業績を正しく生み出そう』

★売上約30億円の卸売業A社がある。A社は1年前、あ と2ヵ月で資金ショートという倒産の危機寸前のところにいた。しかしな がら、役員以外は誰もこの現状を知らなかった。

そこで幹部全員と面談し、改革の火種となりえる人を探した。また危機感を共有してもらうために、業績数値を幹部以上にオープンにして、現状を詳しく説明した。現状を全く知らなかった幹部にとって非常にショックなことであり、当然のことながら青ざめていた。

収支バランスを取るために、人員削減を含む固定費削減を進める一方で、黒字にするためにはいくら売上が必要なのかを明確にした。幹部メンバーを筆頭に、目標売上数字に対して差額がどれだけあるのかを毎日徹底的に意識させ、その差額を埋めるために何をしなければならないのかを考え行動させた。

3ヵ月後、営業努力の甲斐もあって、単月黒字が32ヵ月ぶりに達成できた。単月黒字を発表した時には大きな歓声があがった。まさしく社内全体が同じ方向を向いて、目標に対して真摯に取り組む姿であり、バラバラだった組織がひとつになった瞬間である。全社員が笑顔になり、社内の空気が3ヵ月前と180度変わっていた。

あるべき姿と現状とのギャップを明確にすることで"正しい危機感"を与え、部下を同じ方向にどれだけ正しく向けられるかが、業績を正しく生み出す近道である。

1+1=2では組織は成り立たない。1+1を3や4、あるいはそれ以上にするために何をしなければならないのか。これを実現するのが幹部の役割である。

 

(139)『"経営のバックボーン"に歪みはないか』

経営方針について聞くと
  • ・「毎年内容があまり変わらない」
  • ・「経営計画書は年に数度しか見ない」
  • ・「実行したかどうかの評価をしていない」
  • ・「そもそも具体的に何をするかが明確となっておらず、評価できない」

 

経営とは
  • ★トップの考えを、幹部を通して、社員全員の協力(日常活動)により実現させること。その設計図を個人の行動計画まで落とし込まなければならない。

 

組織の設計図

○経営理念(存在目的、使命は何か)
○ビジョン(夢、目指すべき姿は何か)
○戦略(勝てる場の発見と勝つための条件づくり、競争優位の確立)
○目標(中期経営計画の作成)
○組織(戦略を実行する体制づくり)
○年度計画(全社方針を部門方針⇒個人目標へと落とし込む)
○実行と成果(PDCAにより計画を確実に実行)
○評価・分配(行動・スキル・成果を評価、給与は高く人件費は低く)

★ビジョンや戦略が不明確な企業は、目先の業績が中心の行動となり、企業体質そのものを変えていくという発想が不十分となる。単年度経営の弊害であり、目指すべき企業像へ体質強化させていく力、将来の業績のための行動がとれていない状態となる。

自社の、戦い方の設計図として再設計が必要ではないか、今一度見直していただきたい。

 

(140)『チェンジリーダーの条件(その1)』

ピンチをチャンスに変えることのできるリーダーを「チェンジリーダー」と名付けている。
通常、ピンチに遭遇したときにどのような対応をはかるかで、次の4タイプのリーダー像に分類できる。

1.PO(ピンチ・アウト)型 想定を超えるピンチ状況を迎えると、たちまち悪い結果を引き起こすタイプ。
リスクやクライシスへの感度が鈍く、修羅場体験も少なく、性格的にも弱い。
経営面では一極集中のスタイルが多い。つまり、得意先、商品、人材、立地、方法などが特定の部分に集中したままになっているケースだ。
2.PP(ピンチ・ピンチ)型 何とかしなければ危うい」と気付きながら、抜本対策が打てずに手をこまねいたまま、ジリ貧状態を招く優柔不断なタイプ。「ピンチだ。変えなければ」と口にするが、有効な実行具体策が出せない。
社歴の長い経営で、財務面での余裕があるケースに多く見られる。
3.PW(ピンチ・ダブルピンチ)型 行動力はすばらしく率先垂範で「良いと思えること」を矢継ぎ早に実行する現状認識力(問題の本質をつかむ力)が不足しており、成果につながらず、傷口を大きくしてしまうタイプ。行動優先の良き社風だが、構想力に欠け、右往左往する経営となる。
4.PC(ピンチ・チャンス)型 結果のみを求めすぎることなく、問題の本質を「原因→プロセス→結果」の流れでキチンと急所を押さえることができる。バランス感覚(大局観)と柔軟な発想力、さらに先見力を持ち、早めの対策を整然と打てるタイプ。
これが「チェンジリーダー」であり、ピンチをきっかけに組織のバージョンアップを成し遂げる経営を行う。

 

(141)『チェンジリーダーの条件(その2)』

★ピンチをチャンスに変えるチェンジリーダーが備えるべき心技体は"3V"で表わすことができる。それはVenture、Value、Vitalityの3つのキーワードである。それぞれを充実する方法は次の通り。

  • 1.心(Venture)
    ベンチャー魂というチャレンジ精神を持つ
攻め7割、守り3割。ゼロベース発想で挑む。そのために、

(1)「自分がやる」という覚悟をして退路を絶つ
(2)リーダーとしての目的と使命をハッキリさせる
(3)「ピンチはチャンス」というプラス発想で臨む
  • 2.技(Value)
    新価値創造のスキルをみがく
前例にとらわれず、活かすべき長所・特徴を明らかにし、柔軟にアイデアを発揮する。そのために、

(1)3つの目を持つ(鳥・虫・魚の目~大局観・分析眼・変化眼~)
(2)実行優先でやってみる(60点主義に立ち、走りながら修正していく)
(3)他人の知恵、異分野に学ぶ(素直さを持ち、絆を大切にする)
  • 3.体(Vitality)
    元気モデルとしての態度を示す
リーダーはいかなる時もメンバーを元気にする人。そのために、

(1)常に明るく元気な声・表情・態度を堅持する
(2)言葉選びに注意(本質を短く表わす)
(3)快食・快動・快心・快眠~一日決算主義~

「心→技→体→心・・・」と繰り返す。謙虚さと開き直りを両立させ、喜々として困難に立ち向かおう。「逃げない、投げない、諦めない」。「俺がやらねば誰がやる」の心意気だ。

 

(142)『リーダーの"仮説力"』

★QCストーリーや問題解決のために、「仮説の設定」という重要なステップがある。

QCストーリー
1.問題点の発生
 ⇒ 2.統計的データにもとづく問題点の実態分析
 ⇒ 3.問題の真因分析("なぜ"の5乗)
 ⇒ 4.あるべき姿の設定(問題点に対する正しい認識)
 ⇒ 5.仮説の設定(改善案・衆知の提言)
 ⇒ 6.メリットとデメリットの想定(検証)
 ⇒ 7.デメリットの対応策の検討(2次対策)
 ⇒ 8.改善実行プランの作成(ツール・スケジュール)
 ⇒ 9.実行推進(検証)
 ⇒10.歯止め策の策定

一番重要なステップは③問題の真因分析である。
なぜなら問題の真因をつかまない限り、どんな対応策を講じても根本的な解決にならないからである。

 

次に重要なステップが⑤仮説の設定(=仮説力)
「この問題に対して、もしこのような対策を講じたらどのようなメリットとデメリットが生じるのか」という「想定し得る状況設定」をすることである。

 

  • ★再発に歯止めがかからない不良・クレーム対策に対する仮説、集客ができず業績が上がらない要因に対する仮説、いつも目標にあと一歩で達成できない要因に対する仮説。
  • ★私たちの回りには常に「問題」と「要因(真因)」とそれに対する「仮説」が無限に存在する。

 

(143)『経営意識の高い幹部になろう』

企業の将来を見る場合、1年後であれば決算書、5年後であれば商品、10年後であれば人材と言われている。

★「企業の寿命は30年」と言われるように会社は潰れるように出来ているものであり、努力、工夫を怠らず管理をしなければ、継続発展できるものではない。トップとベクトルを合わせ、しっかりと築いていく人が幹部である。

1.トップと方向感覚を合わせる トップならどう考え、どう判断するのか。なぜトップはそう考え判断したのか、掘り下げて考える習慣をつける。
2.ワンランク上の仕事をする ワンランク上の仕事をするためには、自分の仕事を部下に任せないとオーバーワークとなってしまう。ワンランク上の仕事が出来ない幹部の共通点は、自分で仕事を抱え込んでしまうことである。
3.戦略発想を鍛える トップとベクトルを合わせ、重点を絞り込み、やるべき事を明確にする。NOW(今の責任を果しながら)・NEXT(次の手を打ち)・NEW(将来を考える)が大切である。
4.バランス感覚を養う 経営バランスが崩れると破綻してしまう。そうかと言って、バランスをとったままでは成長できない。あえてバランスを崩し、いかに大きくバランスさせるか。その復元力が大切である。
 ○攻めと守り(売上と利益、利益と経費、資産と負債資本のバランス)
 ○環境変化(市場・需要・ライバル動向と自社のバランス)
 ○時間(将来ビジョンと現実のバランス)
 ○経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報の効率的なバランス)

厳しい時代を勝ち残るために求められる幹部は、経営意識のある部門経営者である。 これらを踏まえ、経営者の視点で考え、行動できる幹部を目指していただきたい。

 

(144)『日本人は"団体戦"で力を発揮する』

東日本大震災は、経済環境をこれまでとは違った別のステージに変化させた。被災地に国をはじめとした行政の復興支援策が実施されている。

ここで経営者や幹部社員は「以前の経済環境には決して戻らない」と気づく必要がある。経営は環境適応業であり、どのような経済環境にも適応 していく自助努力が不可欠である。その施策の一つとして筆者が提唱するのは"個人戦から団体戦へのシフト"。推進ポイントは次の3点である。

1.目的・目標を共有する 日本人は個人としては弱いが、団体を組むと大きな力を発揮する特性がある。これは目的・目標を共有し、それに対して個々人が協力し合うからである。企業においては経営理念や企業ミッションが目的・目標の最上位概念であり、改めてそれらを全社員に徹底していくことである。
ただ、経営理念や企業ミッションはとかく漠然としがちであるため、経営者や幹部社員はそれを咀嚼して部下に発信し続け、「目的・目標を達成していくために、今、何が求められているか」を日常業務に落し込んでいくことが求められる。
  • 2.「ONE・FOR・ALL、ALL・FOR・ONE」のスピリッツを植付かせる
「一人ひとりはチーム(団体)のために頑張り、チーム(団体)は一人ひとりが成果を出せるように皆でサポートしていこう」という意味(ラグビー競技のスピリッツとして有名)である。
つまり「個人によって得意不得意はあっても、一つの目標に向かってそれぞれが得意な面で力を発揮しつつ、不得意な部分は互いにカバーし合って目標を達成していこう」という思いをチーム内に植付かせる。
  • 3.レベルアップするための仕掛けづくり
団体を構成する個々人がレベルアップするための仕掛けづくりに常に留意すること。特に次の5点が大切だ。
  • (1)良いことをした時は、全体の前で褒める(善悪の基準や期待している事を教える)
  • (2)計画立案に参加させ、発言の機会を与える(大きな視野で見させる)
  • (3)個々人の能力段階に応じて、効果的な教育訓練を行う
  • (4)能力を上回る仕事を与え、サポートして成功させる(自信をつけさせる)
  • (5)正直者がバカを見ないようにする(要領の良さではなく、努力するものが認められ、報われるという当り前の環境を作る)

 

(145)『心の在り方を変えよう』

結果が変わって自分が変わるというのは有り得ないのです。
自分が変わるから結果が変わる。
自分と結果のベクトルは、常に、「自分⇒結果」なのです。
結果を変えたければ、まずは自分が変わらなければならないということです。

 

自分が変わるためには、心の在り方を変える必要があります。

心の在り方は決断に影響を及ぼします。

決断は行動に影響を及ぼします。

行動は成功の度合いに影響を及ぼします。

つまり、心の在り方を変えれば、決断が変わり、決断が変われば、行動が変わります。
そして、行動が変われば、人生が変化するのです。

心の在り方が正しければ、必ず成功を収めることができるのです!

 

(146)『継続的改善の視点』

★企業が持続的成長を遂げるには、当然だが「継続的改善」を実践していかねばならない。それを展開しない限り、企業は永続など不可能である。では、"継続的改善"を実行するポイントは何か。組織・方針・人材という3つの視点から考察していきたい。

  • 1.<組織>
    顧客指向の組織を形成する
不確実性の高い事業環境において、何より優先すべきは顧客ニーズに対する誠実な配慮であり、そうしたニーズに応えられる柔軟性を、組織がどの程度備えているかを見極めることが重要である。
  • 2.<方針>
    イノベーションを喚起する
継続的改善には、時代環境に適応するためのイノベーション(技術革新)が必要となる。
イノベーションを引き起こすツールとして、「方針」は大変有用である。
●花王の「商品開発5原則」
 (1)社会的有用性の原則
 (2)創造性の原則
 (3)パフォーマンス・バイ・コストの原則
 (4)調査徹底の原則
 (5)流通適合性の原則
  • 3.<人材>
    実行力を高める
継続的改善には、人材の実行力が欠かせない。この実行力とは、経営者・管理職を問わない必須科目である。実行力に必要なのは、リーダー自身が組織に情熱を持って深く関与することだ。この"関与する"とは、建設的で一貫した質問を投げ続け、問題の核心をつかむことを言う。

 

(147)『プロジェクト成功の秘訣』

★ノーベル経済学賞を受賞した故ハーバート・サイモン教授が「計画のグレシャムの法則」なるものを著書の中で提唱し、プロジェクトに取り組む組織へ興味深いアドバイスを与えている。いわく「ルーティンワークは、ノンルーティンワークを駆逐する」。

ルーティンワーク
日常業務や通常業務を意味し、毎月あるいは毎日反復して行われる業務

 

ノンルーティンワーク
非日常業務・非通常業務を意味する。すなわち、プロジェクトタスクやクリエイティブワークのこと

 

★プロジェクトの遂行やクリエイティブな業務といった仕事が、企業の成長や革新にとって最も重要な要件であるにもかかわらず、担当者が日常業務に忙殺されて計画通りに進捗しなかったり、クオリティーが低下したりすることはよくあることだ。
そこで、プロジェクトを成功させている組織に共通する姿勢と取り組みを、以下に列挙する。参考にされたい。

プロジェクトを成功させる姿勢と取り組み
1.トップのプロジェクトに対する強靭な意志力
2.プロジェクトの具体的目的・目標の設定
3.プロジェクトリーダーの権限の明確化
4.メンバーのプロジェクトへの専業体制
5.通常の評価制度とは一線を画したプロジェクトメンバーへの評価基準の設定
6.プロジェクト終了後のメンバーへのキャリア保証

 

(148)『目標必達の為の業績先行管理』

★多くの企業は業績低迷にあえぎながら、"業績を向上したい""揚げた目標を達成したい"と考えている。それらを実現するために用いられる手法が、「業績先行管理」である。

遅行管理×
 ・・・  前月の結果を見て何が良かった、悪かったと議論する。
終わったことをいくら言っても手が打てない。
同時管理×
 ・・・  今月の売上げ状況を確認しても、すでに残り少なくなった時点で「当月の対策・・・」と言ったところで、打てる手など限られてしまう。
先行管理○
 ・・・  先行で3~6ヶ月先までの累積目標から、現在確定している売上げを差し引いた類型差額に対して対策を打つ。

あるシューズ卸会社は、かつては月次決算を行うも翌月の15日過ぎにやっと数字がまとまるという遅行管理で、気付けば売上げ未達の月が年間の大半を占めるといったジリ貧業績体質であった。 この体質を改善するために先行管理を導入したものの、初めから8カ月の先行管理ができたわけではない。ステップを踏んで1年半がかりで導入した。

まずは当月と翌月の2カ月間の累計差額対策から取り組み、3カ月→6カ月→8カ月と期間を延ばしていった。そして8カ月先行管理が定着してきた約2年後、毎月の売上げが目標の105~120%の割合でクリアできる強い体質に生まれ変わった。もう売上げ未達の月はなくなっていた。


同社が生まれ変わったポイントは、ライバルより先に手が打てるサイクルが出来上がったことにある。今より少し先までを見ることができれば、余裕を持って営業活動が行え、目標必達の強い体質が出来上がるのである。

 

(149)『前向きな姿勢を持て!』

★経営理念を持たない企業が結構多い。また、経営理念が形骸化している企業も実に多い。これでは働く社員はかわいそうである。

社員が前向きに取り組むためには
会社の理念を明確にうたうことだ。その上で方針を確定し、対策を打ち、実行・チェック・成果・結果を出すという流れを築くことである。

 

その時に大切なこと

悲観的な思考で事を運ぶと、必ずできない方向性で物事を考えてしまう。そういう考えになった場合は、すぐに「できるんだ!」という肯定的な考え方に変えることである。それにより「結果を出すためには何をしなければならないか?」という考え方になる。この考え方が「前向きな考え方」である。

「理念・方針」を末端の社員まで正確に説明し、納得させることも大切だ。これができる企業とできない企業では、大きな差が開く。

納得させるために必要なことは、幹部が完全に理解した上で、部下に説明する。そして方針に沿った実行具体策を部下に作成させるのである。

社員自身がつくった実行具体策になるので、社員は前向きに取り組むことができる。それでも、後ろ向きな発言をする者が出てきた時は、厳格な姿勢で幹部チェックをすることだ。

怒るのではなく、ヤル気を出させる言い方で背中を押す。そのためにも前向きに「できるんだ! やれるんだ!」という考えに自ら立ち、行動することが大切である。

 

(150)『"当たり前のことができる組織"づくり』

★A社は、産業用機器のマニュアルなどを専門に印刷・製本する年商8億円、従業員40名の印刷会社である。

創業以来、大手企業を顧客に持つという安心感からか、社員の間には危機感がほとんどなかった。営業担当者は顧客から注文が流れてくるのをただ待つだけの存在であり、工場は生産性を全く考慮しない職人集団であった。遅刻はする、始業と同時に生産スタートしない、気分次第で印刷するものを決める、何がどこにあるか分からない倉庫には在庫の山というありさまだった。まさに「当たり前のこと」ができない体質の企業であったと言える。業績も赤字、しかも債務超過という危機的な状態であった。

現社長の代になって信賞必罰の厳しい姿勢で経営に臨んだ。

これにより、遅刻の撲滅や計画通りの生産という基本的なことが定着した。 業績も黒字転換した。

「3S活動(整理・整頓・清掃)」を導入

3Sを行うことにより、職場は必要なものがすぐに取り出せる合理的な場所となり、また徹底継続することで、良い習慣が社内に形成されることとなった。また、仕事をしやすいように工夫をするという改善意識も芽生えた。これによりA社の企業体質は大きく好転した。

3S活動という少し遠回りに見える取り組みを通じた方が、結果的には早道の場合もある。一度、試してみてはいかがだろうか。

 

(151)『経営者は原点を語れ』

★B社研修会の目的を聞くと、親会社の役員が子会社のトップに就くとのことで、親会社からのしばりや圧力がかかるのではないかと幹部が危惧しており、この機会に経営スタンスを"はっきり、すっきり"させたいとの意向であった。

★研修会でB社社長は「親会社の中長期戦略には100%準拠するが、親会社とはいえ特別扱いや偏重はしない。わが社に移植するのは親会社の"イズム"のみだ。よって幹部が共有すべきは、そのイズムを継承したわが社の経営理念である。この理念を唯一の判断基準としマネジメントしていただきたい」と喝破した。

A社のイズムの概要は次の通りである。
清廉活発な企業風土を基盤に成長し続け、これをもって業界全体の発展に寄与する。

そのために
1.礼儀・礼節を重んずる
2.方針・目標・通達は即、実践
3.決定事項が不本意であっても全力投球
4.出来ない理由を考える前に出来る方策を考え、打ち出す
5.結果に対して責任を持ち、愚痴・言い訳はしない

理念が人を高みへ希求させる。社風は即席では創れない。経営者・経営幹部は日々、企業原点を"真剣"に語るべきである。

 

(152)『リーダーの命がけ』

★リーダーが具体的に取り組む「3つの命」★

1.使命
  • ・世の中の「お役に立つ」ことができるから存続できる。社会的な存在意義~企業使命感なくして真の成長はない。どこの誰の、どのようなニーズやウォンツに役立とうとして自社が存在するのかを、リーダーとして明快に示すことだ。法人客・個人客を問わず、経営資源を集中する具体的なターゲットとニーズを捉え直す必要がある。
2.宿命
  • ・成果(業績)で評価を受けるプロとしての宿命を知る。「お客さまに喜ばれました」と言いながら、赤字を生んだり代金回収が滞ったりするようでは、存続が危うくなる。
  • ・100点満点のない経営の世界では、トライアル&エラーの実践に取り組みながら、成果を帰るソリューションスキルが求められる。問題の本質をえぐり、解決ストーリーを組む設計力と実行パワーを磨くことである。
3.革命
  • ・過去と断絶し、未来からの視点で革新する。大転換の時期には、前例主義、ことなかれ主義では真の問題解決は望めない。潮流の変化の先にある未来像から自社、自部門を見つめ直し、抜本的に「捨てる、改める、導入する」の大局観と柔軟な発想力で臨むことだ。改善・改良方式の枠を超えるチャレンジである。

いよいよ「リーダーの命がけ」の時代が到来した。
「変化はチャンス」。理性的かつ情熱的な実践が成否を決めると言えよう。

 

(153)『社風は気付いたら"できている"』

先日、実施した営業研修での事例を紹介したい。

事前のヒアリングで確認した問題点は、「営業社員に自社のカラーがない」ことだった。
つまり中途採用者が多く、前職の営業スタイルを引きずっていることが原因と思われた。

トップから社員に至るまで、自分に責任が及ばぬように「それなりに説明(言い逃れ)できるかどうか」ばかりが重視されていた。
問題の営業社員も、目標への達成意欲より会社の指示事項をこなしたという"アリバイづくり"が優先され、その結果、慣れた前職の営業スタイルをだれも変えようとはしなかった。これが冒頭の真因であった。

「社風」とは、会社が決めて発信するものではなく、日々の業務の中で蓄積されるものである。それは手法の問題ではなく、根本的な考え方の統一である。研修も良いが、それ以前に考え方の問題か、スキルの問題かを押さえることが先決であり、日常業務における考え方の徹底ができていなければ、一時の花火で終わってしまう。

まず、日々の業務の「始末」ができているか、会議の決定事項をきっちりと進捗管理しているかなど、身の回りの物事から見渡し、自社にとって必要な「当たり前」がきっちりできているかどうかを確認してみてはいかがだろうか。

 

(154)『全社を挙げての意識改革』

★「これまでは、いくら危機意識をあおっても社員は動かなかった。社員と経営陣の思いが1つになった時、会社が変わりはじめた」。この言葉は、経営再建をお手伝いしたA社の経営者が口にした言葉である。

そもそも、経営者と社員は対立する関係にある。
与える側と与えられる側、命令する側と命令される側、実行させる側と実行させられる側である。
そのため人を動かす場合、どうしてもカネやポスト、命令といったトップダウン型のマネジメントが中心になってしまう。その結果、組織内には「やらされ意識」を持った指示待ち人間が多くなる。

今日のように環境変化が激しい場合には、組織も迅速に変化することが求められる。
そのためにも変化の現場に近い社員が、自分で考え、判断し、俊敏に行動することが不可欠である。指示待ちの受身組織では変化に対応できない。

また、そのような組織の中でいくら優れた戦略やビジョン、方針を打ち出しても、それは絵に描いたモチに終わる。重要なことは社員の意識改革である。社員を、自ら動く「自立型人材」にさせることである。

そのために経営陣が行うべきことは、「トップダウン型経営」から「参画型経営」に変えるという意識改革である。

★組織の目指すべき姿を共有化する「参画型経営」によって、経営陣と社員の境界線をなくし、社員に経営への参加意識を持たせる。その結果、社員と経営陣との関係は"Win-Lose"から「Win-Win」の関係へと変わり、業績向上と社員の働きがい向上が実現するのである。

冒頭で紹介したA社で、参画型経営に向けて取り組んだことは次の3点であった。

1.ビジョン・戦略の策定(策定プロセスへの参加と意思の共有化)
2.経営情報の発信と共有化(ガラス張り経営)
3.意思決定プロセスの整備(会議システムの整備)

結局、「経営陣の意識改革なくして社員の意識改革はなく、社員の意識改革なくして業績向上はない」のである。

 

(155)『コストダウンが進まない理由』

★現場においてはいくらトップが指示を出しても、なかなかコストダウンが進まないケースによく遭遇する。往々にして、それは調達・仕入れの現場でよく見られるが、現象を分析すると次の4つのケースにパターン化される。

1.コストダウンを正当に評価する制度がないケース
  • ○努力しても大きく評価されない
  • ○前年同様の取り組みを継続するだけで、調達のトラブルを恐れ新たなチャレンジをしていない
2.調達の体制・インフラが未整備のケース
  • ○「何を、どれくらい、いくらで、どこから、どういう条件と方法で、どの位の頻度で購入しているのか?」など情報が各部門間に分散し、調達の全体像を一元的に把握することができない
  • ○同じモノを複数部署で購入していたり、同一業者との取引を複数の担当窓口が行い、外部調達の全体像を把握することが困難となっている
  • ○調達(支払い)部門と利用部門が異なり、当事者意識が徹底されていない
3.試算や交渉のスキル、ノウハウが個人によりバラツキがあるケース
  • ○業者の市場構造・市場価格に関する情報が、組織的に収集・蓄積されていないため、価格の妥当性に関する判断がなされていない
  • ○業者との交渉ノウハウがなく、業者にとって都合の良い価格や契約を鵜呑みにしている
4.管理プロセスが未整備なケース
○当初に設定した購入価格を見直すこともなく、支払いが継続されている
  • ○新規業者との交渉が実行されておらず、既存業者が長期間固定化し、「持ちつ持たれつの関係」となっている

  • ★常に自社の現場がどのような状況にあるかを把握し、適切な対応を図っていく必要がある。

     

    (156)『経営者の時間管理術』

    ★経営者にはなすべきことが山ほどある。お得意様や株主、従業員、仕入れ先、役員など、すべてのステークホルダーの幸せを最大限求め続けるためには、1日24時間フル稼働したとしても十分ではない。
    ★そこで経営者は、限られた時間で最大限の成果を上げるための"時間管理術"を身に付ける必要がある。今回は、経営者の"時間管理術"について述べたい。

    1.明確な価値判断基準によって優先順位を付ける
    経営者の仕事はすべて重要である。しかし、それらは同時にはできない。したがって、1つずつ片付けることになる。そこで重要となるのが、明確な価値判断基準に基づいた、仕事の優先順位の付け方である。
    価値判断基準は、冒頭の「すべてのステークホルダーの幸せを最大限求め続ける」ということから考えるべきだ。会社が成長し、存続していくために、なすべきことを最優先事項に据えなければならない。そして「攻め」と「守り」の仕事を均等に時間配分する必要がある。
    2.集中できる時間を確保する
    経営者の仕事は、意思決定にかかわるものがほとんどを占める。このため、集中して考え、判断を下す必要がある。それにはだれにも邪魔されず、集中できる時間を確保しなければならない。だれからも連絡が入らない早朝や深夜、あるいは移動時間などを活用することである。
    3.判断は社長が行い、行動は幹部に任せる
    判断を下すことは社長の仕事である。だが、それを実行するのは幹部以下、社員の仕事である。時には旗振り役として社長が先陣を切って行動する必要もあるが、大半の仕事は幹部に権限委譲して任せていく必要がある。経営者は幹部が行き詰まった時に出て行けばいいのだ。
    会社の規模が大きくなればなるほど、経営者の意思決定の仕事は増えてくる。
    仕事を任せられる幹部社員を育てることは、経営者の任務でもある。

     

    (157)『基本と成長の4C』

    業務革新は
    「絶えず『顧客の視点』から経営をチェックする機能が、自社に組み込まれているか」が出発点
     

    各社はいろいろな業務革新 に取り組んでいるが、トップの意思の中心は自社の業務改善であり、顧客視点での業務革新に至っていない事例が多く見受けられる。

    流通業を例に業務革新2つの視点
    1.基本条件からの視点:基本の4C

    中堅マネジメント層が取り組むべき
    重点課題
    (流通業界で戦う中、有無を言わさず備えていなければならない条件)

    • (1)クリンリネス:Cleanliness
      お客さまを清潔な店舗で迎える体制になっているか。
      (お客さまは清潔かどうかを絶えず相対比較で判断する)
    • (2)コンビニエンス:Convenience
      お客さまから見て買いやすい品揃え、売り場になっているか。
    • (3)カスタマーサービス:Customer Service
      感じの良い接客ができているか。
    • (4)コンフォータブル:Comfortable

    (1)~(3)の実践と、音楽や空調などの環境提案により、お客さまが心地よく買い物ができる環境をつくっているか。
    2.成長条件からの視点:成長の4C

    「成長の4C」はトップマネジメント層
    が取り組むべき重点課題
    • (1)コラボレーション:Collaboration
      取引から「取組」への仕組みができているか。
    • (2)コントロール:Control
      マネジメント体制の確立ができているか。
    • (3)キャビネット:Cabinet
      マネジメントメンバーの育成は明確になっているか。
    • (4)キャッシュフロー:Cash Flow
      指標経営の確立ができているか。

    経営革新の最重要テーマは「顧客視点での業務革新」と言えるのではないだろうか。

     


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