財務ノウハウ(7)

(1)保証協会へ代位弁済される?

(Q)
ある銀行で借入(運転資金)があり、この不況で返済が苦しく、利息のみの返済をしておりましたところ、あるときに「信用保証協会にまわす」といって、銀行員は用意しておりました利息を受け取らずに帰りました。
その後保証協会と話をはじめていましたが、突然その銀行より内容証明で、当座預金に入った売掛金を「利息分として受領した」という通知が来ました。
お尋ねしたいのは、用意していた利息を受け取らずに帰っておいて、当座に入った売掛金を勝手に引き出して利息に充当すると言う行為は銀行としては当たり前の行為なんでしょうか。理不尽な気がしております。

(A)

「信用保証協会にまわす」という言葉の意味は、保証協会に銀行の融資を代位弁済もらうよう手続きする、という意味でしょう。 信用保証協会の保証がついている融資は、あくまで出し手は銀行ですが、それを保証協会に代わりに払ってもらうと、その後は保証協会が、あなたの会社の債権者となり、保証協会と交渉を行っていくことになります。
当初、利息を受け取らなかったということは、代位弁済手続きに入るということが銀行内で決まっていて、その銀行員に、指示があったことと思われます。

また、当座預金に入った売掛金を利息分として受領したことについてですがもとは売掛金であっても、当座預金に入金となったら、当座預金の一部となります。銀行が、延滞となっている融資の利息を当座預金から受領したということであれば、この銀行の行為は法的に特に問題はない行為でしょう。
また状況から、保証協会への代位弁済手続きが着実に進んでいるのでしょう。

あなたの会社が、現時点でやっておくべきことは、保証協会保証付融資の保証人と担保がどうなっているかを洗い出しておき、今後の対策を考えていくことです。
保証協会への代位弁済が行われると、保証人への取立てや、担保の競売手続きが現実的となっていきますので、影響を最小限に抑えられるような対策を考えていく必要があります。

 

(2)信用保証協会の保証枠は合算される?

(Q)
東京都と神奈川県の保証協会で信用保証を受けている場合の無担保保証枠
 8000万円はどのようになりますでしょうか教えてください。考え方としては、
 例えば東京都+神奈川県=8000万か
 東京都=8000万円、神奈川県=8000万円
を最高限度額として保証してもらえるのでしょうか。

(A)

信用保証協会の保証枠は、合算で決められます。
質問の例で言えば、東京都+神奈川県=8000万です。
全国の信用保証協会がオンラインでつながっていて、他の信用保証協会でいくら保証枠を使っているか、すぐに分かります。

なお、保証協会は、企業が支店登記をしている地域の保証協会も使えるので、東京都が本社、神奈川県が支店(支店登記あり)という場合などで、このように複数の都道府県の保証協会を使う場合が起こりうるのです。
もしくは、愛知県信用保証協会と名古屋市信用保証協会のように、「市」にも保証協会がある地域で、名古屋市の企業が愛知県と名古屋市の保証協会を使う場合なども起こりえるケースです。

 

(3)信用保証協会保証付融資が代位弁済となるとどうなるか

経営者の中には、信用保証協会自身が融資を出している、と勘違いされている方もいらっしゃいますが、あくまで融資の資金を出しているのは銀行です。銀行の融資に、信用保証協会が保証をしている、という形です。

信用保証協会
保証
銀行
融資
企業
 
その融資の返済ができなくなり、リスケジュール(返済条件変更)交渉も行わず、延滞のままほっておくと

代位弁済になります。

代位弁済とは、融資の返済ができなくなった企業に代わって、信用保証協会が企業の代わりに、銀行に残額を一括返済することを言います。

代位弁済となると、その代位弁済金額が全額、信用保証協会に返済とならないかぎりは、信用保証協会は保証を付けてくれません。

一方、信用保証協会保証付融資でも、リスケジュールであれば、リスケジュール期間中に利益が上げられる体質になって返済再開ができ、6カ月経過すれば、審査しだいですが保証を付けてくれるようになります。

ここで、次の違いを再認識してください。

延滞は、銀行や信用保証協会に無断で返済をしないことで、ほっておくと代位弁済に移行されます。 リスケジュールは、返済できないならできないで銀行や信用保証協会と交渉し、毎月の返済金額を減額してもらうことです。
延滞をほったらかしにして代位弁済となれば、代位弁済金額が全額完済となるまでは、信用保証協会は保証を付けてくれません。 一方リスケジュールの形であれば、リスケジュール期間中に利益が上げられる体質にして返済を元に戻せば、信用保証協会は保証を付けてくれるようになります。リスケジュールした融資金額を全額返済しなくても。

こう考えると、やはり代位弁済になるよりは、銀行や信用保証協会と交渉してリスケジュールしておく方が、後々のことを考えるとよい、ということになります。

しかしリスケジュールの方は、元金の返済額は減額しても、利息はしっかり支払う必要があります。一方代位弁済の方は、利息も含めて信用保証協会と支払交渉を行うので全体的に支払いの負担は少なくなります。
利息の負担を考えると、企業の資金繰りがよほど厳しい状況であれば、いっそのこと代位弁済として企業の支払い負担を一気に改善する、という手もあります。

いずれにせよ、返済が厳しくなってきて、新たな融資も受けにくくなったら、どうすればよいか対策を考える必要があります。最もいけないのは、何も動かないで、単なる延滞にしてしまうことです。

 

(4)団体信用生命保険(保証協会団信)

法人の代表者に万が一のことがあった場合の後のことを考えるのなら、保険は加入しておいた方がよいでしょう。

(Q)
信用保証協会保証付融資を信用金庫から受けた時、「団体信用生命保険(保証協会団信)」を借入限度額まで行いましたが、加入されない借入者が大半との事で、私の加入した判断は正しかったのでしょうか?

(A)

保証協会団信とは、
「信用保証協会からの債務保証を伴って融資を受けた個人事業主の方が、その債務を全額返済されないうちに死亡もしくは所定の高度障害といった不測の事態に陥られた場合、または信用保証協会からの債務保証を伴って融資を受けた法人がその債務を全額返済されないうちに、代表権を有する連帯保証人の方が死亡もしくは所定の高度障害といった不測の事態に陥られた場合に、社団法人全国信用保証協会連合会が生命保険会社から受け取る保険金をもとに、金融機関に対する債務を弁済することによって、事業の維持安定・円滑な事業継承とともに、ご家族・後継者の安心を図ることを目的とした制度(全国信用保証協会連合会のサイトより抜粋)」というものであり、任意加入となっています。

例えば住宅ローンを受ける際には、団体信用生命保険をかけますが、もし債務者が死亡するなど万が一のことがあると、残りの融資残高は保険金が払われて一括返済となり、残された家族等に債務が残らないことになります。それと同じように保証付融資においても、保証協会団信に加入していれば、法人の代表者に万が一のことがあった場合に、保険金が払われて一括返済されることになり、残された法人の維持安定、後継者への円滑な事業承継が図られることになります。だから、法人の代表者に万が一のことがあった場合の後のことを考えるのなら、保険は加入しておいた方がよいでしょう。

 

(5)人件費を変動費化できないか

いかに固定費の割合を減らし変動費の割合を増やすかを考えることによって、売上低下の局面に強い企業作りができます。

以下、単純な事例を見てみます。

売上が100百万円(1億円)で、経費が80百万円かかっている会社があるとします。利益は、100-80=20百万円です。
この経費が、
 1.100%固定費
 2.50%固定費50%変動費
 3.100%変動費
の場合、売上の増減により利益はどうなるかを見てみます。単純な計算なので容易に理解していただけると思います。

売上が100百万円→70百万円と、30%低下した場合、利益はどうなるかを見てみます。
  • 1.100%固定費の場合
    売上70百万円(30%低下)
    経費80百万円(100%固定費のため変わらず)
    →利益△10百万円
  • 2.50%固定費50%変動費の場合
    売上70百万円(30%低下)
    経費68百万円
    (50%固定費50%変動費のため変動費部分40百万円が30%低下し28百万円となり、固定費部分40百万円を足すと)
    →利益2百万円
  • 3.100%変動費の場合
    売上70百万円(30%低下)
    経費56百万円(30%低下)
    →利益14百万円

このように、経費の中で変動費の割合が高い企業ほど、売上の低下の局面に強い企業、ということになります。

固定費として見られる経費の代表は、人件費です。 その人件費を、変動費化する方法を考えてみます。

1.パート社員、派遣社員の活用
売上が減少した時、社員の削減を考えなければならなくなりますが、正社員では、なかなか辞めてもらうことはできません。パート社員では辞めてもらいやすいですし、派遣社員であれば派遣を終了すればよいです。
つまり、売上が減少してもなかなか辞めさせづらい正社員は固定費として、辞めさせやすいパート社員や派遣社員は変動費として、見ることができます。
2.外注化
外注費は、変動費の代表です。例えば製造業などで、仕事が最大にある時を基準とした工場の社員を抱えている企業がありますが、仕事が少ない時を基準として工場の社員を確保し、仕事が多くなった時は外注を活用するなど、考えられないでしょうか。
3.社員の成果により変動する給与を拡大
営業社員などで考えられます。売上を多く作る営業社員も、売上を全く作らない営業社員も、同じ給与であれば、売上を全く作らない営業社員は、そこで会社に赤字をもたらしていることになります。売上や粗利益の獲得に応じた成果給部分を多く、成果によって変わらない基本給部分を少なくする給与体系を作ることにより、人件費の変動費化が進みます。
4.会社の業績に応じた賞与
毎月の給与部分を少なくし、会社の業績に応じた賞与を多くします。
例えば月給25万円の社員がいるとすると、会社の業績が赤字であれば、年間賞与を0円とし、会社が大きく利益を出しているとすると、賞与を年間100万円とします。このように、会社の利益が赤字やトントンであれば賞与を出さず、利益を上げれば賞与を出す方式にすることにより、人件費が変動費化します。

しかし、いざこれらの方法を導入しようとしても、社員の反発がこわい経営者の方は多いかと思います。

◎自社の経営状況が悪くない会社であれば、悪くなる時に備えて、やれるところからやっていったり、今後採用する社員から変えていく方法が考えられます。

問題は、現状で売上が減少して赤字が出ている企業です。

そういう企業は、待ったなしですので、例えば営業社員で売上を上げてくる社員が少なく赤字となってしまっている会社であれば3の方法を導入して人件費の変動費化を行うなど、経営者が断固とした意志を持って、人件費の変動費化を行っていくべきです。
またこういった企業の場合、会社に貢献しない社員に辞めてもらうなど、一部社員に辞めてもらう策をう必要があります。

例えば社員数30名の会社であって、5名辞めさせると黒字化する会社があるとします。
その5名を辞めさせることができなければ、30名全員、共倒れとなってしまいます。
そこを考えると、5名は辞めさせないといけないことがよく分かるのではないでしょうか。

 

(6)新会社を作る時の鉄則

(Q)
当社は建築業をしています。主にハウスメーカーの下請け工事です。
父親が代表のときの借金があり(現在の返済は金利のみ)融資が受けられない状況だったため、母親名義で別法人を5年前に立ち上げました。
私はハウスメーカーに勤めていて、1年半前から家業を手伝っているのですが、先日運転資金の借入れを申し込んだところ、保証協会の審査で落ちてしまいました。S銀行さんの話では売上等では問題はないとのことでした。
やはり、同一の住所で、家族が経営している赤字の会社があると融資は難しいのでしょうか。

(A)
新会社を作る時の鉄則は、旧会社の
1.役員、2.株主、3.保証人
を全く切り離して作るとともに、同じ住所にしてしまってはだめです。
そうしないと旧会社で融資が受けられないから融資を受けられるように新会社を作ったのだろうと信用保証協会に見透かされてしまい、融資を受けることは困難になります。

 

(7)ノンバンクからの借入

商工ローンやビジネスローン専門金融機関、不動産担保融資専門会社など、ノンバンクからの借入れを銀行に知られてしまうとどうなのか、という質問は、よくいただきます。


銀行から見ると、ノンバンクからの借入れがある企業は、通常であったら銀行から融資を受けて資金繰りを行うところ、銀行から融資が受けられず、銀行よりも金利が高いノンバンクから借入れした、という見方をされますから、そうでない企業よりは、融資を出さないというわけではないですがやはり、融資審査に慎重になってしまいます。

■また、ノンバンクといってもいろいろな種類がありますが、それぞれのタイプごとに、そこから出る融資がどういうものか、見てみましょう。

○商工ローン
以前破たんしたSFCGのように、高金利で融資を行う金融機関です。 商工ローンから融資を受けるのは、せいぜい、一時的に資金が足りない状況ですぐに返済のあてのある場合ぐらいにとどめておき、銀行から融資が受けられないからと商工ローンでしのごうとしてはなりません。
○ビジネスローン専門金融機関
融資の金額は数百万円と少額で、金利も10%あたりと銀行に比べて多少高い融資を出す金融機関で、多くは銀行の資本が入っています。このような金融機関からの融資を受けるにしても一時的な資金ぐらいにとどめておくべきです。
○不動産担保専門金融機関
不動産担保融資を専門とする金融機関があります。金利は一桁台後半から10%前後あたりとなります。担保とできる不動産があるのなら、通常であればそれで銀行から融資を受けるでしょうから、不動産担保金融機関から融資を受けるということは銀行からなかなか融資が受けられない会社、ということが通常であります。

いずれのタイプの金融機関においても、共通するのは、
 ・銀行からなかなか融資が受けられない企業が使う金融機関であること。
 ・金利は銀行からの融資よりだいぶ高いこと。
という特徴があります。

  • ★これらノンバンクから融資を受けるにあたっては、銀行の融資はリスケジュールを行い、金利の高い融資で金利の低い融資の返済を行うという構造にしないことが前提となります。
  • ★そしてノンバンクから受けた融資は、最後の会社を立て直すための資金とします。
  • ★銀行から融資が受けられない状況は、業績が芳しくない状況であり、立て直しを意識的に図っていかねばならない状況です。

 

(8)売上大幅激減の会社の立て直し方

とにかく、企業は倒産を回避し、再生に向かって進んで行かなければならないのです。

ここ数年、多くの企業から、売上が激減した、というご相談をいただきます。
この理由としてよくあるのは、1社や2社に多くの売上を依存しているパターンです。
売上が激減した場合、倒産を回避して再生への道を進むにはどうすればよいでしょうか。

この場合、2つの考え方があります。

1つは、今まで1社や2社に売上を依存していた体制を見直し、売上先を分散する体制を作ること。リスク分散の考え方です。
この場合、自社の技術を生かし、今まで依存していた業界ではなく異なった業界にアプローチできないか、を考えます。
ただ、この場合は新規売上先の開拓の必要があり、すぐにとれる対策ではないでしょう。将来的な策ではあっても、緊急事態にすぐに行うことができる策ではありません。

そこで、2つ目は「縮小均衡」 売上5億円が、例えば4.5億円に減少するような少しの売上減少であれば、一部の経費削減でしのげるのかもしれません。
しかし売上5億円が、2億円にまで減少するような売上激減の状況であれば、経費削減という生ぬるいことでは全く足りません。売上2億円で損益がトントンとなるように、損益計画を一から作ります。

最も削らなければならない経費
多くの会社では人件費でしょう

 

社員を辞めさせることができなければ、会社は破たんして、全員、共倒れということになってしまいます。

この場合の解雇は、整理解雇ということになりますが、整理解雇には次の4要件が必要です。
1 人員整理の必要性
整理解雇を行うには、相当の経営上の必要性が認められなければなりません。
2 解雇回避努力義務の履行
解雇は、最後の手段であることが要求されています。役員報酬の削減や、新規採用の抑制、希望退職の募集など、整理解雇を回避するための経営努力がなされていることが必要です。
3 被解雇者選定の合理性
解雇される社員の選定基準、具体的人選が合理的である必要があります。
4 手続の妥当性
説明、協議など、整理解雇を納得してもらう手順を踏んでいる必要があります。

※このように、整理解雇を行い、売上が激減しても損益がトントンとなる体制作りが必要です。

 

(9)催促の手紙を出して失敗した・・・

内容証明郵便の出し方

■支払を催促する活動の一つに、手紙を出して催促をするという方法もあります。
この手紙を使った催促の中で、最も過激な方法が「内容証明郵便」という特殊な郵便方法を使ったものになるのです。

内容証明郵便とは・・
 1.どんな内容の手紙を
 2.いつ相手に出したか
ということを、郵便局が証明してくれる特殊な郵便物のことです。

売掛金を回収をするためのノウハウ本を読むと、内容証明郵便が魔法のツールのように書いてあることがあります。インターネット上で検索しても、「売掛金回収と言えば内容証明郵便」というような感じです。
内容証明郵便だけで回収できるならば、誰も売掛金回収に苦労しません。実際には、むしろ内容証明を出すことで、
 ⇒"話がこじれて長引く"
 ⇒"まったく無視される"
というようなことも珍しくありません。
内容証明はなんら法的な拘束力を持つものではないために、まずもって無視できてしまうのです。

とりあえず支払が滞ったから内容証明郵便を出そう、という発想は捨てて下さい。

では、どんな時に内容証明郵便を使って催促すべきなのでしょか?

内容証明郵便は「宣戦布告」の意味合いが強いです。
コミュニケーションも取りづらく、支払意志がないならば、これはもう戦闘を開始する相手ということになります。

注意!
しかし、注意していただきたいのは、内容証明郵便を出すだけではダメだということ、出して反応がなかったらどうするのか、ここを考えてから動かなければいけないということです。

 

(10)差押えしてみたが回収できない・・

差押えすればどんな会社からでも回収できる、というのは非常識

  • ■売掛金を支払ってもらえていない場合や、貸したお金の返済がない場合など、あなたに正当な権利があれば、その相手が持っている財産の差押えをして回収することができます。
    例えば、銀行の預金口座とか、売掛金、不動産なんかがいい例です。

しかし、例えばいざ相手の預金口座を差押えできたとしても、実は回収に成功しないことがあるのです。

■具体的な事例を見てみましょう。
例えば、差押した銀行の預金口座に肝心の預金がないかもしれません。
調査した口座が、既に解約されていることもあります。
差押えをした銀行口座の名義人である、売掛金を払わない相手先が、その銀行から借入れをしていたとします。
すると、あなたが差押えを行ったことを発動条件に、その銀行はあなたに優先して口座にある預金を回収してしまうということも起こります。
ちなみに、お金を貸している銀行が持っている、そのような権利を相殺といいます。
こんなこともあるのです。
例えば、不動産を差押えしても回収できないことがあります。
それは、中小企業の場合、ほとんどの不動産が銀行借入れの担保に入っていて、既に価値がない状態になっているからです。
そのような状態だと、差押えすることすら裁判所が認めてくれないことがあります。
また、差押えができたとしても、換金手続きに高額なお金が必要なことも障害になるかもしれません。
しかも、そもそも不動産の売却には時間がかかります。高額なだけに買い手を探すための時間が必要なのです。
あなたがいくら急いで差押えをしても、換金するまでには時間がかかってしまいます。それこそ、都心の一等地だとしても換金までには最低半年は見ておいた方がいいでしょう。
早く回収して資金繰りを良くしよう、という中小企業のニーズには合わないのかもしれません。

差押えという面倒な手続きをした結果として、実際に手元にお金が帰ってくるためには何を差押えればいいのか、これを知っておく必要があります。

また、一度差押えの手続きをすると、その相手も財産を隠したり、差押えを妨害してくることが往々にしてあります。 つまり、できるだけ初回で決めないと取り逃がす可能性が高まるということなのです。

そのためには、何が換金性のある差押え対象物なのか、そしてその調査方法は何か、についてもっともっと知っておく必要があります。

 

(11)差押えは誰にでもできるのか

■あなたの会社が売掛金を持っているのであれば、もしものことを考えて、「差押え」についての最低限の知識を持つことは必要です。

まず知っておいていただきたいのは、あなたの会社の売掛金が未入金になった場合で、その入金すべき会社に倒産可能性があるとすれば、すぐにでも差押えができるという事実です。

裁判をしなくても差押えをすることができるこの手続きを、『仮差押』といいます。

裁判所に一定の保証金を積めば、あなたの一方的な主張に基づいて、相手の財産を差押えてくれるのです。

但し、何でもかんでもOKということではありません。もし不当な仮差押えであって相手に損害を与えた場合、保証金は損害賠償の一部に充当されます。

また、すぐにでも、といっても、それぞれの状況がありますので、おおよそ1ヵ月以内には差押えができると思っていただければ間違いないでしょう。

そして、弁護士さんに頼まなくても自分で手続き可能です。やはり始めてのことで不慣れな分、手間はかかると思いますが、裁判所に問合せをしながらやればできないことはありません。

機会があっても良くないですが、一度チャレンジしてみると良い経験になると思います。
実践してみてもいいですし、書籍やマニュアルで勉強してもいいのですが、そうして知識を得ておけば、いざという時の対応に違いが出てくるようになるでしょう。

 

(12)取引先から急に支払を延ばしてほしいという要請が来たら・・・

何か起こってからでは遅いです。

もし、あなただったらどう対応するでしょうか?

「急にどうして支払ができなくなったのか」
「いつ支払ができるのか」
「現在の資金繰りはどうなのか」
帝国データバンクなどの興信所に問い合わせて、興信所の点数が何点であるのか、その確認のためにデータを取得するところまで行う方もいるかもしれませんね。
状況確認でしかない

 

■ヒアリングにおいては、その会社によって質問の内容を事前に考えます。

一例として一般的なことを挙げると
  •  ⇒「メインの取引先さんは、S社さんだったと思いますが、現在も取引は継続しているんですか?」
  •  ⇒「今は、他にどんな取引先と商売をしているんですか?」
入金になってから3ヵ月以内に回収しないと回収率が激減するという事実を知っているから、最悪の場合に『何を差押えするか』という観点で行う!

 

まとめると、

 1.差押え手続について最低限の知識は持っておく  2.どんな資産が差押えできるのかを知っておく  3.上記の1と2が明確であればいざという時の対応が回収目線になる  4.結果的に未回収売掛金は減る

・売掛金の回収は社員に任せきり。
・会社としての対応は何もしていない。
・既に未回収が発生している相手先から受注を受け続けているが、なんの対応策も打っていない。
・経営者が未回収の売掛金がどこにいくらあるのか把握していない。
・過去に未回収売掛金が発生しているが、今後の対応策を立てていない。
・社内で誰も取引先の信用調査ノウハウがない。
・社内で誰も売掛金回収・債権回収に詳しい人がいない。

このような状況を放置していませんか?

 

(13)金貸しの審査と回収

■融資を検討する場合『定量』と『定性』の両面からの視点で可否を決めます。

定量とは
数字で見える部分のことだと思って下さい。
今回で言えば、不動産に貸すお金以上の価値がありましたから、この点では何の問題もないように思えます。

 

定性とは
数字では見えない部分のことです。
例えば、社長の性格、人柄、趣味、会社の評判・噂、などなど。

 

■やはり定性よりも定量情報の方が審査の上で占めるウエイトは高くなります。
おおよそノンバンクの基準から言えば、定量が80~90%、定性が10~20%

以下の8点をよくチェック
1.取引をするのかしないのか、定量と定性の両面から考えること
2.定量と定性には一定割合を決めて判断すること
3.リスクがあると判断したらそれを軽減するための方法を考えること
4.基本的にはキチンと契約を行うこと
5.契約した時点で回収時のストーリーが描けていること
6.未入金が発生した時点で当初から考えていた回収アクションを準備
7.未入金はのんびりと構えずにすぐ状況を確認する
8.やると決めたらすぐに回収アクションに移る

※中小企業にも応用できるポイントが、たくさんあります。ここをもっとしっかりとできれば、あの時、あの売掛金の未回収は出なかったのではないでしょうか。

 

(14)保証付融資が過去の経緯により受けられないがどうしたらよいか

(Q)

私の会社は、法人成りして5期目に突入いたしました。その前は、父の個人事業形態でした。2005年の10月に私が法人化し、2006年の9月に父の個人事業をそのまま吸収しました。

新しい事業を興そうと考え、銀行融資を試みました。銀行としては当社とは初めての取引だったので、信用保証協会の保証を付けて融資をしたいという事で、手続きを開始してくれましたが審査が通りませんでした。

理由は、私が法人成りしてから父の事業を吸収するまでの間に父が個人事業で信用保証付き融資を受けていて、同一の職場で仕事を行なっている以上、父の個人事業へ実行した融資は、今の法人で使っているのではないですか?という事です。

実際は、父が新たに店舗を出し、その際に借入したものですが、うまくいかずたたんでしまい、その後私が吸収した形となっています。 信用保証協会は、今の父の債務が残っている間は保証できないと言ってきます。
銀行側も信用保証協会の保証がない限りは、新規取引においてプロパー融資はできない、と回答してきます。

一つ案を出されたのは、日本政策金融公庫(旧国金)から借入し、そのお金で債務を消せば融資できる、との内容です。
これを実行して今後問題とならないかどうか?が一つと、もう一つは現状でプロパー融資を受ける事はできないか?あるいは、信用保証協会の保証にこぎつける事はできないか?という事です。

今のご時世ですので、1店舗だけだと売上/利益に限界を感じます。1つの店舗から出せる利益は少額になろうとも、2店舗3店舗と増やせば、それなりの利益ボリュームが出せるかと思うので、何とか融資にこぎつけたい所です。

(A)

お父様の個人事業を吸収したといっても、個人事業時代に受けていた保証付融資の返済が順調にいっていれば、融資を受けていることのみによってあなたの会社が保証協会の保証を受けられないことはないのですが、その融資が延滞やリスケジュールを行っている状態である、だからあなたの会社においても新たな保証協会の保証が受けられない、ということなのでしょう。

個人事業をたたんだ、ということは、個人事業において融資を受けていた保証付融資は、延滞の状態かリスケジュールの状態か、もしくは保証協会が代位弁済を行った、ということになっているのでしょうね。
延滞もしくはリスケジュールの状態であれば、通常の返済に戻して6カ月を経過させれば、また保証協会の保証を受けられる可能性が出てくるのですが、代位弁済までされている状態であれば、その分を全て保証協会に返済しなければ、あなたの会社も保証協会の保証は受けられません。

日本政策金融公庫の融資で保証付融資を返済するという案を出されたのであれば、おそらくその保証付融資は代位弁済されている融資、ということなのでしょう。 日本政策金融公庫で融資を受けて保証付融資を返済するのは、日本政策金融公庫にその事実が分かってしまうと、次に日本政策金融公庫から融資を受けようとするとき、審査において引っ掛かってしまうことでしょう。(あくまで、その事実が分かってしまうと、です。) また、プロパー融資の方が保証付融資より、審査は厳しいので、保証付融資が受けられない企業は、プロパー融資を受けることは困難です。

しかし、財務状況がよい企業であれば、過去の事情で保証付融資が受けられなくても、プロパー融資が受けられる企業は、まれに存在します。
現状のあなたの会社は、まずは個人事業時代に受けた保証付融資を、なんとかしなければなりません。
弊社事務所にて、資料を見たうえで対策を考えますので、必要であれば面談相談をお申込みください。

 

(15)「一社員の影響」により業績が悪くなる場合

中小企業は、経営者が全てです。経営者自身が、会社のすみずみまで目を届けなければいけません。

一社員の影響の例として、次のようなものがあげられます。
  • ・経理の社員が、お金を横領していて、会社は損失を多く出した。
  • ・発注担当の社員が、高い仕入や外注費などの見積りを業者から受入れ、裏でその業者からバックマージンをもらっていて、会社は損失を多く出した。
  • ・一営業マンが売上の多くを作っていて、その営業マンが辞めたとたん、売上が大きく下がった。

原因


経営者が、一社員に会社の重要な業務を任せすぎてしまっていた。
会社にはいろいろな職務がありますが、ある職務において、全面的に任せられる社員が出てくるまでは、経営者はその職務を兼ねるべきであり、はじめからある職務について全面的に任せようとすると、上記のようなひずみが出てきてしまいます。
また、ある職務を全面に任せられるのであっても、経営者としてはその職務について一通り熟知し、その担当者と情報交換すべきであります。

  • ◎経理であれば、経営者も仕訳や銀行入出金明細を時々チェックし、問題がないか見ます。
  • ◎発注業務においては、相見積状況、発注履歴などを時々チェックして、不自然な動きがないかを見ます。
  • ◎営業活動においては、営業マン個人のスキル便りではなく、会社全体で、営業成績があげられる仕組み作り、例えば会社としての顧客リスト管理、営業マンの教育研修、ロールプレイングなどを行います。

企業規模がまだそんなに大きくない中小企業です から、これらの目配りは、経営者としてできるはずです。 もっと企業が育っていくと、経営幹部に任せていったり、内部監査制度を整えていったりしますが、今のうちは、経営者がすみずみまで見ていかないと、社内はしっかりしませんし、あるきっかけで業績は急降下したりします。

今回述べたことは、会社経営において大変重要なポイントですので、自社はどうであるか、振り返ってみてください。

 

(16)経理社員として会社の資金繰りにどう貢献するか

(Q)

社員30名程、年商10億弱の卸売業の会社の経理をしていますが、銀行関係は社長が一人で行い、銀行員と話す機会がありません。相談は会計士としているようです。どういった面で、会社の資金繰りの役に立てば良いかお教えください。

また、当社は卸売業で、長年支払条件を細かく整理できていません。先代の社長(故人)も整理には消極的でした。理由は分かりません。 ついては、改めて得意先へ支払条件を聞くと、当社の信用不安と取られてしまうことも有るのでしょうか。新しい若い社長は、整理を承認しています。

(A)

御社の状況では、経理としては、まずは経営者に、損益や資金繰り、部門別会計などの経営数字を、経営判断材料として提供していくことで、貢献できるとともに、経営者もあなたを信頼するようになり、経営計画や予定資金繰り表なども経営者と一緒になって作っていけるようになるのではないでしょうか。

また、支払条件の交渉については、相手から見ると、まず間違いなく、資金繰り不安を真っ先に思い浮かべてしまいます。あなたの会社の資金繰りに問題があるのであれば支払条件の交渉は行っていかざるをえないですが、資金繰りにそれほど問題があるのでなければ、支払条件の交渉を行うことは慎重に判断されるべきです。

 

(17)見積りを出して受注を獲得する企業の再生方法

企業は、見積書をいくらの金額で出すかにより、その商談から獲得できる粗利益が大きく変わってきます。

■例えば、弊社のある顧問先様は、リフォーム業ですが、営業マンが4名、います。
ここ2年の、営業マンごとの、受注件数、売上金額、粗利金額、粗利率を分析してみました。

営業者名 受注件数 売上金額 粗利金額 粗利率



194
135
137
197
116,147,780
46,473,760
127,566,052
179,985,697
23,794,127
16,463,658
41,175,506
28,300,003
20.5%
35.4%
32.3%
15.7%

Cさんは、しっかり粗利益を出せる見積りを出すために、リフォーム業において原価部分である、材料業者や外注業者に相見積りをとり、原価を抑えながら、正確な原価の積算をした上で、粗利益をとれる見積作りにていねいに時間をかけていたのです。
一方Dさんは、売上だけで見ると一番多く、それだけ外に出ている時間が長いため、一見、営業マンとして仕事やっているように見えます。

しかし見積りは適当で、原価は過去の工事データから適当に拾ってくるだけ。とにかく売上を増やそうと、安売りにはしっています。 またDさんの特徴は、見積りにおける予算と、実績において、ぶれが大きい、ということです。
例えばある工事において、売上100万円、原価70万円で見積りをたてても、実際に原価が90万円かかってしまい、粗利益が10万円しかなかった、このようなことが多くあります。

原価の積算において、適当に計算していたためです。

一方Cさんは、原価の積算をしっかり行っていたため、予算と実績のぶれはほとんどありません。
売上はDさんの方が多いですが、粗利益はCさんの方が多いです。
会社に利益貢献をもたらしているのは、粗利益を多く稼いでいるCさんの方です。

ちなみに、AさんはDさんの紹介でひっぱってきた社員で、Dさんに営業のやり方、見積書の作り方を教えられているので、やはり粗利率は低いです。
Bさんは、粗利率は高いですが、稼いでくる売上が少なすぎます。営業マンとしては不向きでも、原価の計算をしっかり行い、着実に粗利益のとれる見積書を作ることができます。

このような分析から、私はこの会社の利益向上→再生のために、次の戦略を考えました。

戦略A
他の営業マンは、Cさんに学ぶべき。Cさんを講師に、研修を行い、また見積書の作成にあたってのマニュアルを作り、見積書作成業務の標準化を図る。
戦略B
営業は苦手だが着実に原価の積算を行い、粗利益を出して予算と実績のぶれも少ないBさんを原価積算、見積書作成担当にし、AさんとDさんが外をまわって獲得してきた案件をBさんが見積書を作るように、分業制とする。

戦略Aは、営業マンの見積書作成能力の底上げを目指した方法、戦略Bは、底上げというよりも各社員の強みを生かし会社全体でしっかり利益を出せる体制を組む方法、です。
受注を獲得する際に見積書を出す企業であれば、このように営業マンごとの売上・粗利益を計測してみてください。

そうすると、営業マンごとに数字が大きく異なることが判明し、経営者のみなさんは驚かれることと思います。
そして、どうやって会社全体で利益を上げていくか、対策を練ることができます。

 

(18)父の会社に役員として入った場合、保証人・担保を要求されるのか

(Q)

私は現在保険代理店を個人で経営しています。今は不動産賃貸をしている父の会社があります、以前は精密機械の部品製造、加工の仕事をしていました。不景気のあおりを受け受注が減り建物のみ残りそこを賃貸しております。当時の負債がまだ残っており地元の信用金庫にお世話になっております。条件変更もしてもらい返済期間を延ばし家賃分を返済に回しています。

最近になり私はその父の会社の役員とさせてもらいました、今の私の仕事の事業拡大のため法人を利用したいとの目的がありました。
ここで1つ不安なのは銀行が私を役員にしたことで保証人の追加や担保を要求してくるのではないかと言うことです。
もし銀行からこのような依頼がありましたらどのように対処したら良いでしょでしょうか。私は住宅ローンも抱え、まだそれほどの余力はありません。家族もいますし、どうしたらよろしいでしょうか。


(A)

代表取締役として入るのならともかく、代表ではない取締役では、取締役になったこと自体では保証の追加を要求されることはありません。
ただ今後、お父様の会社の条件変更期間の更新、という場面において、保証人や担保の追加を要求されることはありえます。あなた自身が、資力があったり、もしくは不動産を所有していたりするのであれば、信用金庫はそれをねらって保証人や担保の追加を要求してくることが十分想定されます。

ただそれは、やりすごすことはできます。しかし問題は、あなたがお父様の会社に役員として入っていることです。そもそも、あなた自身が法人を設立し、そこで保険代理代理店の事業など、行うべきです。それを、お父様の会社だからといって、条件変更済の負債を抱えている、事業の結びつきもない法人を利用するのは方法論として間違っています。すぐに役員を退任して新規法人を立ち上げるべきではないでしょうか。それがまた、お父様の会社の負債の保証人・担保追加要求のスキを信用金庫にも見せないことにもつながります。

 

(19)「銀行つきあい日記」のすすめ

企業の永遠の存続にとって、一番のカギを握るのが、資金繰り

■そして、資金繰りをスムーズにまわしていくことにおいて、重要なのが、銀行からスムーズに融資を受けること。

毎月の利益で生まれた現金で融資返済ができている中小企業なんて、1割もないので、ほとんどの中小企業にとっては、定期的に融資を受けていくことが、資金繰りをずっとスムーズにまわしていくための重要なポイントになります。

融資がパタリと止まりそうな時には、リスケジュール、つまり銀行と交渉して、融資の返済金額を0円近くにまで抑えてもらうことが必要です。
融資が出なくなりそうなことを察知するため、銀行があなたの会社のことをどう考えているのか、常に注意をはらっておかなければなりません。
★経営者や、財務経理担当者であるあなたは、常に気にしておかなければなりません。

■そこで、私が、中小企業の経営者や財務経理担当者の方が、やっておいた方がよいと思うのは、銀行つきあい日記、つまり、銀行と接触するたびに、次のような記録をとっていくことです。

○月○日○時、○○銀行の担当者○○氏が当社を訪問。当社は資金繰り表によれば3ヶ月後に5百万円の資金不足が発生するため、1~2ヶ月後には最低2千万円の運転資金を受けておきたい、ということを○○氏に伝える。
○○氏は、「弊行は融資を半年前に出しておりますので、まずは他行にあたってみてくれますか」と言われてしまった。今までこのような話をした時には「すぐに稟議をあげて手続きを勧めます」と言ってくれるものだが、スタンスが変わったのか?」

 

(20)試算表を銀行に提出する重要性

あなたの会社は、銀行に試算表を定期的に提出していますでしょうか。

試算表は
  • ■銀行があなたの会社の業績を知るためには重要な資料となります。
  • ■ただ銀行から求められてから試算表を提出するより、あなたの会社から銀行に試算表を提出した方が、銀行から見れば、あなたの会社に対する信頼性が高くなるでしょう。
  • ■試算表の提出は、3ヶ月に1度はやった方がよいですし、できれば毎月、試算表を提出した方がよいでしょう。

 

★そもそも銀行は、なぜ中小企業への融資に慎重になるのか★
その大きな理由の一つは、企業の情報開示不足、です。

試算表の提出もなく、1年に1回、決算のときにしか、経営数字が分からない会社は、銀行としては融資を出すのがこわいでしょう。
そもそも試算表を作っていない会社は、1年に1回の決算書ができなければ、1年たってみなければ、黒字か赤字かも分からないのです。その間、赤字であれば黒字にする対策をすぐにうたなければならないものを、1年に1回しか業績が分からなければ、そもそもその対策を行うきっかけができないのです。

試算表が毎月できてこない会社は、すぐに、試算表が毎月できてくる体制を作ってください。

また、今まで融資を申し込んだが、だめであった新規の銀行へも、試算表を送っておくのも、融資提案のきっかけ作りとして、よいことでしょう。
銀行は、たえず新規融資先を探しています。融資取引のない企業から試算表が送られてこれば、必ずチェックをし、融資提案ができるかどうかを検討します。また既存の融資がある企業でも、試算表を銀行員が見ることにより、新たな融資提案ができるかどうかを考えます。そのきっかけとして、試算表は大変有効なものです。

 

(21)融資以外の取引を銀行から言われている

(Q)

メイン1行のみの取引から、メイン1行+2行の3行取引を現在行っております。支払いや振込みはメイン行の当座で、サブ2行は専ら融資のみのお付き合いです。

この状態になって1年半がたちました。最近サブ2行から、積立や振込や支払い等(特に積立)、融資以外のお付き合いもしてほしいと度々言われます。私は会社の財布が2つも3つもあると経理が複雑になるような気がして前向きになれません。
積立も融資を受けている以外の銀行に万が一への備えとしてプールするならともかく、積立しながらそこの銀行で融資を受けるようなことをすると、支払い金利が増えてしまいます。

必要な当座残高以外はなるべく返済し、債務償還年数や流動比率などの指標をなるべくよい数字にしたいと思っております。 しかし銀行の人には「融資も預金の残高もみなさんお付き合いしてくれてますよ」と当然のように言われます。お付き合いも必要だとは思いますが、何より決算書の数字が大切だと思っておりますので・・・・
お付き合いが薄いと融資姿勢に悪影響があるのでしょうか?

(A)

銀行は、取引企業に対し、融資の取引だけではなく、「総合的」な取引を求めます。例えば、積立や振込など、いろいろな取引を求めてくるでしょう。

また、銀行の融資稟議では、その企業とどのような取引を行っているかは必ず記載されています。預金の平均残高が高かったり、振込などにより多くの手数料が銀行に落ちていれば、銀行の考え方としては、トータルで考えてその企業とつきあうメリットが大きい、となります。

ちなみに融資の稟議書では「当社は融資の他、振込、外為取引などで月5万円以上の手数料確保もできている。、さらなる取引深耕をはかりたく、本件融資したい。」というような書き方をします。銀行と融資だけではなく、いろいろな取引を行っておくことは、それだけ融資審査において有利に働く、ということです。

こう考えると、決算書の数字があまり悪くならない範囲で、融資以外の取引もしておいた方がよいでしょう。

 

(22)リースと決算書

(Q)

弊社では貸借対照表にリース資産・リース負債を載せるようにしております。
このたびリースがすべてなくなり、設備等、すべて信用金庫からの借入れで資金調達を行いました。

今回、新たに設備の借入れを申し込み、承諾はしてもらいましたが「借入金が売上の2/3になってますから・・・」「ちょっと難しくなってきますよ・・」とのこと。ここ3年、経常利益は5%以上あります。
銀行などはリース負債などはあまり気にしないのでしょうか?
今まで支払金額(リース金利)が多くなるのを嫌いリースをしませんでしたが今後は考えた方がよいのでしょうか?


(A)

銀行は、決算書を企業から受け取ったら、そのままコンピュータに入力し、各種財務指標を算出し、融資先企業の「格付」を行います。 負債が多いと、それだけ企業の財務指標は悪化します。

そう考えると、財務指標が良い決算書を意識して作るには、借入ではなくリースを使う方が良いし、またリース資産・負債は決算書に載せない(詳細は顧問税理士の方にご相談ください)方がもっと良いことになります。

銀行は、借入金を月商倍率、つまり、月商の何カ月分の借入があるか、でみます。通常の企業の場合、4カ月以下がまずます、4カ月以上8カ月以下がやや多い、8カ月以上が多い、という感覚です。ということは、売上(年商)の2/3、つまり8カ月、ということは、銀行は、借入金水準が高い、という見方をしてしまいます。借入金が多くなると、それだけ、それ以上の借入がしにくくなります。そう考えると、あなたの会社が銀行からもっと融資を受けていきたいということであれば、なるべくリースを使って銀行からの借入の方は多くしない方がよい、ということになります。

 

(23)車両のリース化により決算書の内容は良くなるか

(Q)

知人の紹介で社用車のリースバックを提案する会社が営業にきました。
弊社の車両保有台数は13台で帳簿価格は1126万円です。
車両はメーカー系列のクレジット会社にて割賦で購入しており、残債が898万円あります。
弊社は車両以外の資産がほとんど無く、車両をリースバックすると資産がなくなります。

なお、弊社の決算は4月末で年商は5億円、利益は年商の10%程度を見込んでおります。
また、キャッシュフローも特に問題がないので、リースバックをするメリットが見出せませんが、リースバックを行うことで、決算書の内容が良くなったり、また、銀行からの格付けが上がる等のメリットがあれば検討したいのですが、メリット・デメリットにつきまして教えて頂きたくお願いします。

(A)
現状では、貸借対照表において車両は資産、割賦残債は負債(未払金)ということになりますが、社用車のリース化によって、その資産・負債勘定は消えることになります。
そうすると、総資産が圧縮されて、総資産に対する純資産(自己資本)の比率が相対的に高まり、自己資本比率が向上します。 どれだけ改善するかシミュレーションを行った上、リース化により今後の総額支払いがどれだけ削減されるかなど、他の影響も見ながら、検討されるとよいでしょう。

 

・リースはリスケジュールできるか?

(Q)
すでに金融機関へのリスケをして、現在経営の自主再建に奮闘しています。
さらに削減できるものや、調整できるものがないか日々見直しているところです。そこでお尋ねしたいのですが、OA機器などのリース料などもリスケジュールすることは可能でしょうか?
また、その場合のデメリット、注意点などありましたらアドバイスいただけると幸いです。よろしくお願いします。

(A)
■リース会社は、支払えなくなったらリース物件を回収できるので、リスケジュールという概念を持っていません。しかし、リスケジュールできる可能性がないこともありません。

ポイントは、2つ。

1つ目のポイントは、リース会社1社あたりのリース料総額です。それが3,000万円、4,000万円ぐらいにまでなっていれば、交渉に応じてくれる可能性が高まります。
2つ目のポイントは、モノが中古市場でどう価格付けされているか、です。リース物件は、市場価値が下がって、リース残高を全て回収できないケースが多いです。その場合、リスケジュールに応じてできるだけ回収しようとする場合があります。このケースでも、売却して残高を一括請求されることもあります。逆に中古市場で流動性の高い商品であれば、リース残高よりも高く売れるので、引き上げて売却しようとします。 このように、リース会社のリスケは、中古市場の動向に大きく左右されます。

■またリース会社が、何系かにもよります。

リース会社の親会社が、リース物件の製造元のメーカーである場合、そのモノを引きあげて自分たちで転売することが多いです。
独立系のリース会社。ここもリスケジュールは困難で、交渉に乗ろうとしないことが多いです。
銀行系のリース会社は穏健なところが多いです。親会社である銀行がリスケジュールに応じてくれたら、それに合わせて子会社であるリース会社の方もすんなり承諾してくれる場合が多いです。

 

・銀行員が嫌がる決算書

利益が赤字であったり、債務超過であったりするのはもちろんですが、それとともに、よく分からないところにお金が流れているように見える決算書です。

■例えば、次のような決算書です。

1.経営者に、多額の貸付金や、仮払金が出ている。
経営者が会社のお金を私的流用してしまったり、もしくは粉飾決算において赤字を隠すところを経営者への貸付金にしてしまっているパターンが多いです。もしくは、領収書を出せないリベートを、経営者個人が払った形にして、そのお金は会社から出ている、というパターンもあります。
2.何かよく分からない会社に対し、多額の出資金や貸付金がある。
2については、どこかから湧いて出てきた儲け話に経営者が乗ったものであったり、関係会社を増やすのが好きな社長がその関係者の設立や関係会社の資金繰りのために、お金を出しているパターンが多いです。

あなたの会社の決算書を、一度見てみてください。

貸借対照表の中で、まず、次の勘定科目を見ます。

「前渡金」「立替金」「前払費用」「貸付金」「未収入金」「仮払金」

これらは、雑勘定といって、銀行員の感覚で言えば、「本当にこれって資産としてみなしていいの?」と考えるものです。

これらの金額が多額であると、銀行員としては、勘定科目明細でそれらの内訳を一つ一つ見て、資産としてカウントできるものか、それとも資産とみなせないものか、一つ一つ吟味していきます。
資産としてみなせないものは、純資産からひいて、実質の貸借対照表を銀行は作ります。

例えば、貸借対照表の純資産が5百万円ある会社が、一方、貸付金が経営者に対して8百万円あり、それらが全て不良資産(ちなみに経営者への貸付金はたいてい不良資産とみなされます)とみなされると、5-8=△3百万円
の実質純資産、つまり実質債務超過、とされ、融資審査において大きなハンデとなります。
また「投資有価証券」「出資金」などの金額が大きくなると
銀行員としては、「なぜこんなところにお金が出ているの?もしかして、以前に出した融資が流れてしまっているのでは・・・。」と見てしまいます。

■決算書を良く見せようと、粉飾決算を行う際にこれらの勘定科目の金額が大きくなったり、もしくは本当にお金が流れていて、それが返ってくる見込みがなくこれらの勘定科目が大きくなったりするパターンがありますが、いずれにしても、資産としてみなせないとされれば、その金額分、純資産から差引きされますので、融資審査においてはそれだけ不利になる、ということです。

 

・銀行が、ノンバンクや消費者金融の借入情報を見るようになった?

(Q)

信用組合に緊急保証を使って新しく取引を申し込むことになりました。
必要書類の中に「個人情報の取扱いに関する同意書」というものがあります。
個人信用情報機関は全国銀行個人信用情報センター、日本信用情報機構(JICC)、CICです。
登録情報の中に「借入金額、借入日、最終返済日等の契約内容およびその返済状況」があります。
以前は銀行などの場合、CRIN(※)による事故情報の共有だけだと認識しておりました。
(※CRIN:情報交流CRIN(Credit Information Network:クリン)、全国銀行個人信用情報センター、JICC、CICの間で、各機関の延滞、代位弁済等の情報等を相互利用することであり、いわゆるブラック情報・事故情報のみを相互利用している。)

法改正の影響などで銀行などの金融機関も、消費者金融などの貸金業者と同じように開示請求し、借入額や件数なども確認するようになったのでしょうか。
そうだとすると全銀協・JICC・CICすべてになりますので私や会社が借りている現在の件数8件、500万円を超える金額のノンバンクや消費者金融の利用が分かってしまい、融資は難しくなってしまう気がします。

(A)

例えば、JICCのホームページで、どこの金融機関が加盟しているか検索できますが、それで「信用組合」と検索してみますと、19件の信用組合が、ICCに加盟していることが分かります。また「銀行」で検索すると、72件となっています。
 → http://www.sokuteitool.com/asp/ja.html?u=FI0824&c=1878&f=18

多くの銀行や信用組合等が、JICCに加盟し、JICCの情報の中心であるノンバンク、消費者金融などの借入情報を見るようになってきています。
とすると、Y様の場合、ノンバンクや消費者金融からの借入情報が信用組合にも分かってしまうので、融資審査においては不利になってしまいます。

そもそも、ノンバンクや消費者金融に500万円もの借入があるということは、信用組合や銀行から思うように融資が受けられず、一方で返済は無理にでも進めており、そのしわ寄せがきているのではないでしょうか。このような状態の会社であれば、すぐにでも銀行と交渉して返済金額を減額し、資金繰りをまわしていく対策を考えていく必要があります。

 

・金利を下げる方法

企業側は意識をもって金利交渉にのぞめば、少しでも低い金利にすることができ、自社が負担しなければならない支払利息を、減らすことができます。

■銀行が企業に融資をする際の貸出金利、これはビジネスローンや、制度融資などはじめから金利が決められている融資商品でないかぎり、企業と銀行との交渉によって、決定されるものです。

銀行には、この企業に融資をするには、これだけの金利を提示しなければならないという表があります。
そこでは、その企業の格付けや、今回の融資の返済期間、また保全率(総融資額のうち、担保や保証協会付などでどれだけの金額がカバーされているかの割合)などから、これだけの金利を提示しなければならない、ということが導き出されます。

しかし、それはあくまで「目安」でしかありません。結構、担当の銀行員の「なんとなく」の感覚で、提示してくる金利が決まってしまうのです。ということは、企業側の姿勢により、金利はある程度、低くすることが可能、ということです。

金利を低くしていくために、企業側としてやっておくべきことは2つ。
1つ目ははじめから金利が決められている融資商品でないかぎり、融資にあたって銀行が提示してきた金利には、必ず抵抗するのです。

なかなか融資が受けられないような企業でも、かまいません。
その場合には「この金利では、うちの経営状態ではとても払えないよ。」というような方向から、銀行が提示してきた金利に抵抗していくのです。

そのように抵抗し、交渉していく中で、銀行はその交渉に乗らず、下げてくれないかもしれません。
しかし、金利にうるさい会社、金利にうるさい経営者、と印象付けることに価値があるのです。

そのような印象を担当の銀行員に印象付けることにより、次回の融資では、多少なりとも金利を抑えて提示しよう、という意識が、担当の銀行印に働くのです。
2つ目取引銀行を増やす、ということです。
金利には、競争原理が働きます。複数の銀行が融資を出している企業は、銀行としては自分の銀行の方から融資を受けてほしいと思い、金利を低めで提示しがちになります。 また複数の銀行から同じタイミングで融資の提案がきている場合、低い方の銀行の提示金利を高い方の銀行に伝えることにより、高い方の銀行が、より低くした金利を提示してきて、そこで競争させて、一気に金利を引き下げることもできます。

  • ■このようにして、金利を低くすることができれば、あなたの会社の利益を増やすことができます。
  • ■要は、経営者、もしくは財務経理担当者として、金利に強い意識を持つことです。
  • ■金利に強い意識を持った企業は、銀行から受ける融資の金利水準は低くなります。

 


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