財務ノウハウ(4)

(1)銀行の、できる担当者、できない担当者

■あなたの会社を担当する銀行員が仕事ができる人かどうかをどう見分けるか

問題は、その担当者が、「仕事ができる」人か、「仕事ができない」人か、それにより、あなたの会社において、影響が出てくる、ということです。

仕事ができる担当者
  • ◎担当者の方からあなたの会社に、融資の提案をしてくれます。
    例えば、銀行の担当者が次のように言ってくれるとします。
    「前回融資を出してから6ヶ月が経とうとしていますが、そろそろ融資を検討してみませんか。」
    提案ができる銀行マンであれば、仕事ができると見てよいでしょう。
  • ◎また銀行の得意先係は、ノルマを課されています。仕事ができる担当者であれば、そのノルマの達成に積極的であり、企業に積極的に融資の提案をし、企業から融資を申込まれたらその審査が通るように、支店長などを説得できるような融資稟議書を書くこともできます 。
仕事ができない担当者
  • ◎担当者が「何かご用はないですか?」としか言えない人であればどうでしょうか。このような担当者は、論理的に物事を組み立てることができない人です。 つまり、論理的に書く技術が必要である稟議書を上手く書くことができない人である可能性が高くなります。
  • ◎また、企業側から融資の話をされることを待っているということは、受身の姿勢の人、ということになるでしょう。
  • ◎また、仕事ができない担当者であれば、仕事の段取りも遅くなりがちです。

このように、あなたの会社に銀行の担当者が、仕事ができる人かできない人かによって、あなたの会社が、銀行と円滑な融資取引ができるかどうか、大きな影響が出てしまうことになります。

仕事ができない銀行員を「属性」で見ていくと、30代後半以降で、特に役職についているでもない人は、仕事ができない人である可能性が高いです。 銀行の標準では、30代前半ぐらいから、係長や課長、支店長代理など、なんらかの役職がついてきます。 それが30代後半以降の年齢でも平行員であると、銀行内で仕事ができない人であるとみなされていることになります。

■銀行では誰を担当者とするかをどう決めるか

例えば、ある支店に、得意先係の長を含めて5名の得意先係行員がいたとします。
得意先係の長は、その支店において重要な取引先とされている企業を担当します。
残り4名で、地区を4つに分け、そのテリトリーごとに担当者が決められます。
ということは、あなたの会社が仕事ができる担当者に当たるかどうかは、運不運でしかないわけです。

 

(2)できない銀行担当者にあたった場合の対処法

では、仕事ができない担当者にあたって、我慢の限度を超えるぐらい仕事ができない担当者であった場合、どうすればよいでしょうか。

答えは簡単です。担当者を別の人に変えてもらうことです。

※担当者を変えてほしいという要望は、さすがに担当者本人には言いにくいでしょうから、その支店の別の行員に、申し出をしてみましょう。得意先係の長や融資係の長、副支店長などがよいでしょう。

  • ◎また、得意先係や融資係の別の平行員に対して申し出するのは、おそらくその行員は支店内で発言権がない人ですから、その行員で話が止まってしまう可能性があります。
  • ◎一方、支店長に申し出するのもよくないです。支店長にそのような話をすることにより、その担当者の評価は大きく下がることになります。あなたの会社にとって、その担当者の評価がどうなろうと関係ない、と言ってしまえばそれまでですが、その担当者のことを考えると、支店長に担当者の変更の申し出をすることはあまりよくないかと思います。
  • ◎ただあまりにもあなたの会社に対して悪い影響を与えた担当者であったのなら、直接、支店長に担当者変更を申し出てもよいでしょう。

銀行員の、一つの支店にいる期間は2~3年です。
仕事ができない担当者にあたってしまったのなら、その担当者と2~3年、付き合わなければなりません。
我慢の限度を超える担当者であったのなら、担当者の変更を申し出ましょう。

 

(3)銀行が融資審査の返事をなかなかしてくれない

融資を申込んだ方としては、一日でも早く融資を受け、会社の現預金を潤沢にして、安心したいですよね。 そのようなあなたの思いとは裏腹に、銀行はなかなか融資の返事をしてくれない。そうしている間に、この日にだけは必ず資金がほしい、という日がどんどんせまってきます。 このような時、一方の銀行では、何が起こっているでしょうか。

  • ◎融資審査は、稟議方式で行われます。つまり、融資審査についての稟議書が担当者により作成され、それが次の順番でまわることになります。
    得意先係の担当者→得意先係の係長→融資係の担当者→融資係の係長→次長→支店長
  • ◎また、金額が大きいなど、支店長では融資審査を決裁することができない案件であれば、支店長の後に、本部(審査部)にまわされ、本部において融資審査の決裁がなされることになります。
  • ◎これを見ても分かるように、融資審査の稟議書は多くのところを回るので、なかなか融資審査の結論が出ないのです。
  • ◎また、稟議書をすぐにまわしてくれるとよいのですが、あるところでとどまることも多いです。

銀行に融資を申込み、その結果がなかなか出ない時は、融資を申込んだ相手である銀行員をせっつくことからはじめるとよいでしょう。

ただ、この場合でも、決してその担当者にきつく怒ってはいけません。


きつく怒られてしまうと、その会社が融資が出るように取り組んでみようという気持ちがその後、薄れてしまうようになります。あまり、その会社に近づこうとしなくなるかもしれません。

融資審査の結果を早めに出してもらうためには

融資の申込書に、「○月○日までに返事をいただくことを希望します。」と書いておくことです。
必ず、書面で伝えるようにします。

以上、述べたように、融資審査の結果がなかなか出ないのは、「何か重大なこと」があなたの会社の案件において起こっているから、というわけではありません。
ただ単純に、稟議書が滞っていることが原因であります。

また場合によっては、融資を申込んだ担当者が、稟議書をまだ書いていない、ということもありえます。

このようなこともありますから、融資を申込んだら、なるべく多くその担当者と話す機会を作り、融資の稟議書が早くまわるようにするために働きかけていきましょう。

 

(4)日本政策金融公庫と民間銀行とのバランス

<質問>

最近の「日本政策金融公庫」との付き合い方についての質問です。
現在の弊社の概況をお知らせすると 都銀、地銀、地元第2地銀、信金及び政策公庫との取引があります。少々オーバーバンキング気味ですが、メインは地銀です。
毎期決算明け早々に年間の「ハネ資金」(※企業が事業で稼ぐ現金内では返済をまかなえずに資金が減少していくため、それをまかなうための融資のこと)をいずれかの銀行でお世話になっています。

それぞれの借入金額は、せいぜい正常運転資金の範囲前後で、できるだけ分散化をはかっています。借入総額は年商の約4~5割です。 これまではメインバンクの借入総額が一番多かったのですが、今回はそのタイミングがずれて来期借入後の来期末決算では、政策公庫の残高が一番多くなってしまいます。
将来の設備投資などの点を考えるとメイン行のプロパー融資や信用保証協会保証付融資よりも、何となく政策公庫での実績を重視した方が良いような気がしますが、一方で「いざという時のための銀行」として融資枠を確保(あえて来期は借りない)という選択肢もあります。

状況説明が長くなりましたが、他行(地銀など)を意識した「政策公庫との付き合い方」に留意点などがありましたらアドバイス下さい。 因みに幸いなことにこの7~8年は黒字決算で、今期も黒字化の見込みです。
(K様)


<回答>

日本政策金融公庫は、政府系金融機関ですが、銀行は、政府系金融機関をどう見ているか。それは、民間の銀行ではまかないきれない融資を補完してくれる金融機関、と見ております。
そのため、政府系金融機関の融資残額が一番多くなろうと、そういったことは、民間の銀行としてはたいして気にしていないものです。

あなたがおっしゃるように、将来を見据えて「総額ここまでの融資を借りたことがある」という実績を付けておくために、政策公庫から借りるという選択肢もありでしょう。政策公庫としても、民間の銀行としても、融資審査において必ず見るのが、「ここ2~3年において、この会社に一番、融資の総額が多くなった時はどれだけ融資をしていたか」です。

例えば、ある銀行が1年半前に、ある会社に融資総額が82百万円までなっていたとします。現在の融資総額が58百万円であれば、82-58=24、24百万円の融資が、出しやすくなります(業況が悪くなっていなければですが)。
こういう意味で、借入実績を付けておくと、その後の融資が受けやすいことになります。

また政策公庫は、中小企業の育成のための金融機関ですので、民間の銀行よりも融資審査が通りやすく、いざという時のために今はあえて借りないでおく、という選択肢もあるでしょう。

ここまで述べたように、政策公庫のような政府系金融機関の融資残高がどうであるか、民間の銀行はたいして気にしていないものです。分けて考えてよいでしょう。

 

(5)銀行との融資交渉の秘訣

★私たちが、多くいただく質問の一つに

「明日、銀行と融資交渉をするが、こんなことを言ったら審査が通りやすくなる、もしくは通りにくくなる秘訣があるのか?」というものがあります。


答えは、そのようなものはありません、ということになります。

作成された稟議書は、次の順番で回覧されていきます。
  • 1.支店長で決済できる融資の場合 得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長(決裁)
  • 2.支店長で決裁できない融資の場合 得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長→審査部(本部)の行員→審査部の部長(決裁)

ここで重要なのは、稟議書は書面で回覧される、ということです。

※書面で回覧されるということは、稟議書作成時に、稟議書に盛り込まれる内容が審査を大きく左右する、ということです。

あなたの融資交渉の交渉相手の行員が稟議書を作成しますが、交渉にあたって、融資を通りやすくしてもらおうとあなたが自社のアピールを「口頭」で行ったとします。

しかし、交渉相手の行員は、その全てをメモし稟議書に書くことは難しいでしょう。

融資交渉であなたの会社をアピールするときに、「口頭」で行うのではなく、「書面」で行うのです。 また融資申込も口頭で行うのではなく、「借入申込書」を作成し書面で行う方がよいでしょう。その方が、融資の希望条件を明確な形で銀行に伝えることができます。

アピール材料としては、事業計画書が一番強力なものとなります。
口頭で「自社の売上は今期は前期に比べ2割アップする」といっても、相手は聞き流すぐらいですが、事業計画書でそれがうたわれ、売上がアップする根拠を銀行が理解しやすいように書くと、口頭で伝えるより、よっぽど効果があります。 そのような書面で書かれたものは、稟議書に添付資料として添付されます。 ということは、審査を通しやすくするにあたってあなたが伝えたいことが、融資決裁者である支店長や審査部部長までしっかり伝わる、ということです。

融資審査を有利にすることをいかに書面で伝えるが重要です。

 

(6)メイン銀行の融資を他の銀行で借換えしてよいものか

<質問>

銀行からの借入についての相談です。
年間売上は前期1億5000万円ですが今期は1億1000万円になりそうです。
現状、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)から2500万円と銀行から3500万(2本)の借入があります。N銀行においては、今年の2月に借換を行ったばかりです。

上記の状況及びN銀行の対応等から今後の新規融資は難しいと思っていたのですが、先日短期融資等で取引のある信用金庫からN銀行からの借入+新規分で借換をしないかといわれました。
過去10年近くメインバンクとしてつきあってきたN銀行から信用金庫に借入先を変えて良いものか悩んでいます。
(F様)

<回答>

N銀行借入分を信用金庫へ借換えするのはだめです。その後、N銀行からスムーズに融資を受けられなくなることでしょう。
この場合、もし借換えが行われたとしたら、N銀行としては、あなたの会社から裏切られた、という思いを持ちます。
それだけ、銀行としては融資を他行に借換えられるのは、屈辱なことなのです。

あなたの会社が、N銀行と取引解消するつもりなら別ですが、そうでないなら借換えはやめてください。

 

(7)運転資金の種類について

銀行からみた【運転資金】の分類を参考にしていただいて、資金繰りの悩みから少しでも解放されて、今後の銀行との関係を良化するようにしましょう。

・銀行が融資するときの【運転資金】は1種類ではありません、
・お金に色はありませんが、銀行が融資するお金には青・黄・赤の3色あります。

・貸したい(青色)融資
・積極的に貸すことはないが貸してもよい(黄色)融資
・貸したくない(赤色)融資

・では銀行での【運転資金】の「資金目的」には、どんなものがあるのでしょうか?

1番:経常運転資金 (売上を現状維持する場合に恒常的に必要な仕入・経費等の支払資金)
2番:増加運転資金 (売上が増加する場合や決済条件に変化が生じた場合に必要となる資金)
3番:賞与資金 (夏期・冬期のボーナス資金)
4番:決算資金 (決算時に必要な納税、株式配当、役員賞与、等)
5番:季節資金 (季節によって商品仕入等が増加するときに必要となる資金)
6番:その他運転資金 (手形決済資金、買掛金決済資金、赤字による経費支払資金、等)

★1番・2番は
★3番・4番・5番は
★6番は
(青色)貸したい融資
(黄色)積極的に貸すことはないが貸してもよい融資
(赤色)貸したくない融資

その上限を判定する基準が、『正常な運転資金』という呼び名の【運転資金】です。
「正常でない運転資金」だと判定されたら借入はできません。
借入を実現するためには、『正常な運転資金』として判定されなければならないのです。

※その計算式は・・・  売上債権(売掛金+受取手形(割引・裏書譲渡手形は除く))
+在庫(不良在庫を除く)
-仕入債務(買掛金+支払手形(設備支払手形を除く))

以上の金額が、1番:経常運転資金であり、すべての金融機関を合計して借入が可能となる計算上の上限金額となります。
また2番:増加運転資金は、売上債権の増加額+在庫の増加額-仕入債務の増加額が、計算上の上限金額となります。
1番・2番の場合は、企業が存続する限り必要な資金となりますから、できるだけ自己資本でまかなうのが理想ですが、ほとんどの企業の場合は借入金でまかなっていることでしょう。

ですから、長期借入資金というよりも、むしろ永久に必要な資金ということになり、〔借りっぱなし〕になってもおかしくありません。
ならば、借入をするときに、元金返済をゼロにできたほうが資金繰りの不安・心配は、大幅に減少することになります。
当座貸越・手形貸付(極度)での借入を実現するようにしましょう。
いずれの借入方法でも、毎月の金利支払いと一部印紙代でOKです。

3番~5番については、『正常な運転資金』としての基準は適用されませんが、目的・金額・返済方法が決まっていますので、資金の目的の証拠があれば、1番・2番の運転資金がいっぱいの場合でも、融資は可能となる場合があります。
ただし、3番~5番の資金については原則6ヶ月以内に返済するルール(場合によっては9ヶ月~12ヶ月)がありますので、手形貸付(都度)扱いが一般的です。
ちなみに6番については、ほぼ借入ができないと考えてください、借入可能となるのは、保証協会付の別枠融資や緊急保証の場合です。

■運転資金の借入時期等について

1)資金繰り予想表を作成し、資金の必要な月の3ヶ月前に申込む。
銀行には、融資したい時期と融資をしたくない時期があります。
1ヵ月前に申込んでも銀行の貸したくない時期に当たると、計画通りに借入できないケースが多数発生します。
また、余裕をもって申し込んでおくことによって、次年度から銀行から営業に来る確率が高くなります。
ですから、資金繰り予想を立てるということは、事業継続には必要不可欠なのです。
2)1行ではなく、数行同時に申込みを行う。
1つの銀行で申し込んで、断られてから次の銀行に申し込むと、余分な時間がかかります。
タイム・イズ・マネーですから、数行同時に申し込んでください。
万が一全部の銀行から借りてくれという回答が来たら、ありがたい悩みとして、楽しみながら借入する銀行を選択してください。
  • 3)3番~5番については、支払う時期がほぼ確定していますから、必ず、決算期の3か月前、賞与支給月の3ヶ月前に申込みを行いましょう。

 

(8)経営者は腹をくくれ

「銀行から資金調達ができず、資金繰りが苦しい場合にどうしたらよいか。」

絶対にだめなのは
  • ×金利が10数%もする商工ローンやヤミ金から借りること。
  • ×会社に関係のない第三者を保証人にしてまでお金を借りようとすること。
    迷惑をかける人を増やしていくだけです。
  • ×買掛金や給料の支払いを遅らせようとすること。
    最終的にはやむをえないとしても、それはあくまで最終手段として考えましょう。
 
資金繰りを円滑にまわしていくにはどうすればよいか、それを考えることが優先順位としては一番になります。

そのために、すぐにできる手段があります。
それは、リスケジュール。つまり、銀行に融資の返済を緩和してもらうことです。

 

  • ★このリスケジュール、経営者としてはその決断に、勇気がいることでしょう。
    これは、もう経営者の決断しかないです。誰が決断してくれるでもなく、経営者だけです。決断できるのは。
  • ★経営者では決断ができず、危機意識がない他の役員に聞いてみて「もう少し様子を見よう」と言われ、何の手立てもとらず、資金繰りが破綻してしまった企業。
  • ★5社や10社のコンサルタント会社で相談してどこからも「リスケジュールしかないですね。」と言われても、どこかで「究極の裏技があるだろう。」とさまよい続ける経営者。

私が、今まで多数の中小企業経営者から相談を受けてきて、そのような企業を見てるから、実感をこめて言えます。決断が一ヶ月遅れると、それだけ現金を失い、再生が困難になります。

 

(9)リスケジュール判断時期

  • ・銀行から融資が受けられず、一方で毎月の融資返済は大きい。そういう企業は、返済負担がとても重荷になります。
  • ・その場合、銀行と交渉して、毎月の返済金額を少なくしてもらう返済条件変更交渉、いわゆるリスジュール交渉を行います。

しかしリスケジュールには、資金繰りを一気に楽にするという大きなメリットがある一方、副作用もあります。

「リスケジュールを行うと、二度と銀行から融資を受けられなくなる。」
という大きな誤解が、中小企業経営者の中で蔓延していますが、二度と融資が受けられないわけではなく、リスケジュールを行っている間は、リスケジュールを行っている銀行において、融資が受けられないにすぎません。
「二度と」「一生」、融資が受けられないわけではありません。

リスケジュールを決断する前にまずは、取引している全ての銀行で、融資が受けられないかあたってみてください。

そして、全ての銀行で断られたり、融資が受けられたとしてもわずかの金額であったりすれば、そこでリスケジュールを決断するのです。

ある銀行がリスケジュール(融資返済を減額すること)に対してどのように対応してくるか、その一部抜粋です。

  • ・ビジネスローンのリスケジュールは半額までが限界。それ以上のリスケジュールを求めると、サービサーへ移行となる。
  • ・リスケジュールを求めると、関連会社のサービサー「●●債権回収」が窓口となる。それは交渉窓口が移るのみで、債権が売却されるわけではない。
  • ・リスケ進行中、昨年11月より適用し、今4月末をもって「期限の利益喪失」を図り、利息分を元金に内入れして行く方向を提案され、それに乗るようにした。その上で、最大限期間を考慮しても3年が限界。要は3年以内に不良債権処理を行うということです。●●●●●の場合、ほぼ同じようです。 
    本件は40億企業の場合であり、借入総額15億が裸与信であります。規模がもっと小さいければ、処理の速度は速まるものと思われる。
  • ・●●4県のビジネスローンのリスケジュール担当は●●一人でやっています。リスケジュールは半額程度で5年程度で完済できる計画でないと受け付けてくれません。ただ、金額・期間とも『程度』なので多少幅をもった交渉は可能です。

 

(10)リスケジュールを行うと二度と融資が受けられなくなる?

ある企業が毎月の返済額を減らして頂こうと思い、某地方銀行にお願いに行きましたところ、言われたことの回答です。

(a)これは一行だけではできず、融資行全行一斉にやらなければならない。
(回答)
これは、そのとおりです。理由はリスケジュールを行わない銀行があると、リスケジュールを行う銀行から見れば「なぜあの銀行はリスケジュールを行わないのか。」というように、不公平に見られてしまう。
というところにあります。またリスケジュールを行う銀行と行わない銀行とがあると、中途半端なリスジュールになります。毎月返済が300万円あったとして、それを一部の銀行でリスケジュールを行って150万円まで減額しても、はたして毎月150万円、支払いができるでしょうか。リスケジュールを行うのなら、全銀行、一斉に行うのが原則です。
  • (b)これは信用保証協会付の融資なので、リスケジュールをやったら今後一切信用保証協会付の融資は受けられなくなる。
(回答)
そのようなことはありません。信用保証協会付の融資において、「リスケジュール」は毎月の返済金額を抑えること、「代位弁済」は信用保証協会に、企業の代わりに融資残額を銀行に支払ってもらうことです。
そうすると信用保証協会に債権が移ります。代位弁済になると、代位弁済を行った融資を全額返済するまでは信用保証協会に保証を付けてもらって融資を受けることはできなくなりますが、リスケジュールまででしたら、将来利益が上がるようになって返済が再開したら、融資は受けられるようになります。
  • (c)返済の延滞が一ヶ月を過ぎると事故扱いになり、その場合でも信用保証協会付の融資は一切受けられなくなる。
(回答)
一ヶ月過ぎると自動的に事故扱いになるわけではありません。延滞となっても、リスケジュール交渉を行って毎月の返済金額を減額することに金融機関側が同意すれば、それは返済条件の変更という、事故でない状態となります。
ただ、リスケジュールを行っている期間中は、その銀行からは融資は受けられません。返済が再開したら、融資は受けられるようになります。リスケジュールを行うと「二度と」融資が受けられなくなるのではなく、「リスケジュールを行っている期間中」は融資が受けられなくなるのです。その違いはしっかりご認識ください。

 

(11)関係会社がある場合とリスケを行っている場合の融資

<質問>

会社を二つ持っています。ひとつはリスケジュールをしています。もうひとつはリスケはしていません。この会社は日本政策金融公庫から2本借り入れがあります。
現在3本目を申し込んでおります。面談後三週間が過ぎますが、いまだ回答がありません。

銀行での融資ができるのでしょうかお尋ねします。
(有)B 卸売業 綱渡り状況 リスケ中
(有)H 美容室経営 債務超過であるが、ここ二年単年度では黒字で、今年度も黒字です。代表はどちらも私がしています。すると他の銀行へ融資を申し込んでもだめなのでしょうか、 (K様)

<回答>

まず、BとHは同じ代表者ということで、金融機関の見方とすれば、同一体、つまり同じ会社として見られます。まずポイントは、BとHが同一体として見られているのかどうか。例えば日本政策金融公庫でHの決算書を出しているが、Bは出さず、またその銀行でBの存在が気づかれていないのであれば、日本政策金融公庫はBだけを見て、融資審査を行うでしょう。逆も然りです。

また同一体として見られているとして、B社がN信用金庫でリスケジュールしていても、日本政策金融公庫や他の銀行で、リスケの事実が分からなければ、リスケが原因で融資を受けられないことはないです。決算書などの審査によります。

 

(12)預金ロックに気をつける

リスケジュール交渉を行うには、その交渉を行う銀行の預金口座からお金を抜いて、延滞状況にしておく、のはセオリーです。

リスケジュールの希望を銀行に持ちかけると、たまに、銀行が自社の預金口座を動かせなくすること、いわゆる預金ロック、を行ってくることがあります。
  • ※定期預金があるのであればそれも解約して抜いておかなければなりません。(定期預金の解約は、銀行から抵抗があるかもしれないですが、なんとかやりとげてください。)

リスケ交渉前にやっておくこと

1.リスケジュール交渉を行おうとする銀行の預金口座は、お金を抜いておく。

2.連帯保証人の預金口座からもお金を抜いておく。

3.後でそれら口座からお金を振込されないように、売掛先などに振込口座の変更を依頼しておく。

 

(13)リスケジュールの交渉は成功するかどうか

リスケジュールを銀行が応じてくれると、「借入金変更契約書」を銀行と交わし、その中で今後の返済方法をどう変更するかが明記され、変更契約を交わすこととなります。
つまり、銀行が同意して返済方法を変更することになるので、連帯保証人に取立がいくこともないし、不動産担保が競売にかけられることもないのです。

しかし銀行がリスケジュールに応じなかった場合、銀行の同意が得られないということで、次の段階に進みます。

信用保証協会の保証がついた融資(保証付融資) スケジュール交渉がうまくいかないと、銀行が信用保証協会に代位弁済を求め、代位弁済となります。そうすると、債権者は銀行から信用保証協会に移ります。その後は信用保証協会との交渉になります。
保証がない融資(プロパー融資) 銀行が債権者として次の手をうってくる場合もあれば、サービサーという債権回収会社に銀行が債権を売却して、そのサービサーとの交渉となる場合もあります。

ここでポイントとなるのが、1.保証人、2.担保、です。


保証人に資産があるのであれば、その資産を守ることを考えていく必要があります。
不動産担保も同じです。

※そして残った残債は、支払いを金融機関等が請求しようとしても、支払えないものは支払えないので、金融機関等もあきらめたような感じになります。

保証付融資であれば、保証人に毎月少しずつ支払ってもらえればよいという感じになったり、プロパー融資であれば、それがサービサーに売却されても、サービサーとしては少しずつ支払ってもらい、数年支払い続ければ後はこれだけの金額を支払ってもらえばそれでケリをつけますよ、というような感じになったりします。

まとめますと、リスケジュールに成功しない、つまり銀行がリスケジュールを応諾してくれなかった場合でも、支払えないものは支払えないので、保証人と担保の問題があればその対策を考えていきながら、金融機関等の動向を見ていく、という方向になります。

リスケジュールを行って将来返済再開すれば、再び融資が受けられるようになりますが、保証付融資の代位弁済やプロパー融資のサービサー売却となれば、その後融資が受けられない、ということを認識しておく必要があります。


しかし、保証付融資の代位弁済であれば、保証人が少しずつ返済をしていくことになりますので、その融資がいくら大きな金額でも、実態は融資がほとんどないも同然、つまり返済がほとんどないので大きな残債が残っていても実質的にはほとんどないも同然、ということになります。

プロパー融資でサービサーに売却された場合も同じです。サービサーは、銀行から不良債権を買うので、額面の金額から大幅に値引きしてその債権を買います。

例えば残債が5,000万円の融資でも、不良債権なので価値がほとんどないとされ、200万円でその債権を買ったりします。
サービサーとしては、200万円以上回収できれば後は利益なので、300万円支払ってもらってその時点でケリをつけたりします。
債務者としては、もとは5,000万円あった融資が300万円の返済で終わるので、とても楽でしょう。
その銀行から今後融資を受けられなくなるということにはなりますが、このメリットは大きいです。

またリスケジュールでは金利は通常どおり支払っていかなければなりませんが、保証付融資の代位弁済やプロパー融資のサービサー売却では、元金返済と金利支払いがまとめて考えられますので、金利支払いの負担がなくなるような形になり、そのような点もメリットとなります。
このように、リスケジュールが成功しなかった、つまり銀行がリスケジュールに応じてくれなかったら、それはそれとして、次の世界があるわけです。

 

(14)リスケジュールの必要条件とは?

<質問>

弊社はビジネスホテルという、装置産業であり、例にもれず大きな借入金があります。
この不況で資金繰りが悪化しており、リスケジュールの交渉をしているところなのですが銀行側からの回答が、「まだ資金的な余力があるのでリスケジュールには応じられない」というものでした。「資金的な余力」というのは、ズバリ経営者の個人資産です。個人資産の投入は、これまでも常に行ってきていることは銀行も知っています。それらの返済も全くできていないにもかかわらず、「まだ足りない」とする銀行の姿勢は、出尽くしたら捨てるつもりではないかと思わせるほどです。

銀行が言うにはリスケに応じる条件には3つあって
1.調達の手段がもうないこと
2.経営者に資産が残っていないこと
3.リスケジュール後の具体的な再建計画書も必要だそうです。
1についてはまだ保証協会の枠が残っていますし、2についても少しは残っています。借入金が返せないから交渉しているのに、限度まで借りさせるという考えにはどうしても納得がいきません。本当にこれらは必要条件なのでしょうか? (F様)

<回答>

あなたの会社の損益状況や資金繰り状況を見ているわけではないので、例でしか言えないのですが、例えば、毎月返済金額が500万円、×12で、年間返済金額が6,000万円であれば、事業自体のキャッシュフロー、つまり現金の出入りが年間でトントンとして、年間6,000万円借入することができれば、なんとか資金繰りはまわるのではないでしょうか。こういう資金調達ができる状況であれば、リスケジュールを行わず資金調達で資金繰りをまわしていくべきです。

問題は、この例で年間2,000万円しか調達ができなさそうな場合など、借入はできるもののとてもそれでは資金繰りがまわらない場合です。こういうことが予想されるのであれば、2,000万円調達して、現金預金を豊富な状況にしておき、それとともに別の銀行ですぐにリスケジュール交渉をスタートし、2,000万円借りた銀行においては2~3カ月後からリスケジュール交渉をする、というように、調達が多少できることを利用して、現金預金を豊富にしながら一方でリスケジュール交渉を行っていくやり方です。会社を再生させるには、一方で多少の調達により現金預金をある程度もてるようにしながら、一方でリスケジュールにより資金の流出を一気に抑える、そうして資金繰りを楽にしておくと、やりやすくなります。

リスケジュールの条件が銀行からいろいろつけられようと、そんな条件が合わないからとリスケジュール交渉を止めてはだめです。「1.調達の手段がもうないこと」の条件があり、一方借入が多少できる状況であれば、上記のようなやり方を行いながら、この条件を気にすることなくリスケジュール交渉を進めていくのがよいでしょう。

「2.経営者に資産が残っていないこと」も同様です。資産があっても、それがどれだけの資産かは分かりませんが、個人の生活費分は確保しておくべきですし、それ以上の分は、会社に投入して現金預金を豊富にし、会社再生のための軍資金にするべきです。資産があることが銀行に分かってしまうのは、その銀行で経営者個人の預金を多くおいているからでしょうか。それであれば融資を受けていない銀行にその預金をうつし、個人資産はほとんどなくなってしまった、というように見せられないのでしょうか。
「3.リスケ後の具体的な再建計画書」これは作らなければなりません。それにより、どう再建していき、また返済をどう再開できるようにしていくのか、方向を伝えるためです。これは作ればよいことなので、早く作って銀行にもっていきましょう。

 

(15)あなたの会社が融資の借換えを行うにあたって注意すべきこと

・融資を受けている企業は、自己査定といって銀行が行う自行の貸付金(企業から見たら借入金)資産の査定作業の中で、1社1社、債務者区分をつけられています。

区分は  正常先
要注意先(要注意先の中の一般の)
要管理先(要注意先の中の)
破綻懸念先
実質破綻先
破綻先
となります。要注意先には、一般の要注意先と、要管理先があります。

債務者区分が下になる融資先に対しての貸付ほど、銀行としては貸倒引当金を多く積まなければならなくなり、そのように区分がつけられた企業は、融資を受けることが困難となっていきます。
一般の要注意先であれば融資を受けるのに支障が出てきます。要管理先以下になると基本的に融資は受けられなくなります。
そのため、自分の会社が、一般の要注意先以下にならないように、気をつけなければなりません。せめて、要管理先以下にはならないことです。

要管理先となる要件
3カ月以上延滞となっている融資があるか、「貸出条件緩和債権」があるか、これらいずれか一つが当てはまることです。

 

「貸出条件緩和債権」とは

以下の4つのいずれかの定義が当てはまる融資のことを言います。ただし、そうなった理由が、企業の信用力の悪化によるものに限ります。
  • 1.融資期間中、金利を引き下げ・棚上げ・減額・免除したもの。
  • 2.当初の最終返済期限を延長したもの。
  • 3.分割返済していたものを、返済猶予・ステップアップ返済・期日しわ寄せ返済・期日一括返済へ変更したもの。
  • 4.正常な運転資金として算定される額以上に借入した運転資金の返済期日に、返済財源がなく、継続、延期したもの。 (正常な運転資金・・・売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形)

ここでのポイントは、企業の信用力の悪化により、融資がこのような状態になったかどうか、です。 例えば、リスケジュール。リスケジュールとは、毎月の返済金額を、銀行と交渉して少なくしてもらったり、一括返済の期日に、その期日を延ばしてもらったり分割返済にしてもらうなど、融資の返済条件を、企業にとって楽な方向に変更することを言います。

リスケジュールは、企業側から銀行に交渉しますが、この場合、企業の資金繰りが厳しいから交渉を行うので、企業の信用力の悪化により行われるとみなされることになり、リスケジュールを行うとその企業の債務者区分は要管理先以下になってしまいます。

これが、リスケジュールを行っていると融資が受けられない理由です。

また、リスケジュールが、単なる毎月返済額を少なくするという形ではなく、借換えという形をとっても、それがリスケジュールとみなされることもあります。

例えば、次のようなケースです。
(例)
既存の長期借入が2億円残っている状態で年間5,000万の返済しているという前提で、設備投資のために新たに4億円の融資が必要だが、既存の2億円と4億円を足して6億円の融資額で、年間3,000万の20年払いにしてほしいと銀行に依頼した場合。

このケースでは、銀行が「企業の信用力の悪化」により借換えの手段を使って返済額を圧縮した、と判断したら、貸出条件緩和債権になってしまいかねません。

要は、このような借換えを行う背景がどうであるか、です。

そのため、もしあなたの会社がこれから、返済額が緩和されるような借換えを行う場合、銀行としてはその借換えをどう見るか、銀行と事前に話し合っておくべきです。

 

(16)銀行との返済交渉の質問

<質問>

リスケジュールを取引銀行に約定の数日前に申し入れましたが、必要書類の作成に幾日か要するのとその月分の返済の資金繰りも間に合わない現状です。

担当の融資係には延滞のままだと話ができないかもしれないと言われ、また、月中での延滞はまだしも月超えはしない方が会社の将来のためですよとも言われました。何となく言ってる意味合いは理解も出来るのですが、具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか?

  • 1.延滞のままだと話ができないと言うのは銀行がですか保証協会ですか?
  • 2.月中の延滞と月超えの延滞の違いは信用情報センターに登録されるからですか?また、登録されるとしたら月を超えた時点ですぐにですか?後、月超えの延滞を1度してしまったら将来どのようなデメリットがあるのですか?

<回答>

銀行としては、返済を1カ月分でも進めてもらうに越したことはないため、企業に返済を促すことを第一の目的として、「延滞のままだと話ができない」ということをよく言ってきますが

あなたの会社で最も重要なことは、資金繰りをまわすことであって銀行の返済を進めることではないですよね?銀行の言うことはうのみにしないことです。1カ月分でも返済をしないことにより、あなたの会社はその分、資金を確保でき、それは会社建て直しのための重要な資金になるはずです。

1について・・・ 保証協会保証付融資はあくまで銀行が資金を出している融資ですので銀行と交渉することになりますが、銀行が「延滞のままだと話ができない」と言ってブロックをかけていると考えてください。
2について・・・ 企業の融資は、信用情報センターには関係ありません。信用情報センターは、「個人」での融資の情報を取り扱っているからです。
だから延滞が月中であろうと月超えであろうと関係ありません。また延滞を行うと、その記録は、信用情報センターは関係なくても、その銀行や、保証協会に残ります。延滞が数日続くと、その記録が残ってしまうので、しばらくはその銀行からの融資や、保証協会の保証を付けた融資が受けにくくなるでしょう。

 

(17)できる会社は、今後1年分の資金繰り表を銀行に見せている

あなたの会社は、資金繰り表を作っていますか?

銀行から融資を受けている会社であれば、資金繰り表を作っておくのは、資金繰り対策において、基本中の基本です。

資金繰り表
実績資金繰り表・・・過去の資金繰り
予定資金繰り表・・・今後の資金繰り

資金繰り表を作っているとして、銀行との関係がうまくいっている企業は、その資金繰り表を毎月、最低でも3カ月に1回は提出しているものです。
融資を受けている企業であれば、1カ月に1回は、銀行と接触を持つべきです。
接触を持つには、試算表を提出したい、資金繰り表を提出したい、という理由で十分です。

★銀行に資金繰り表を提出する目的は、企業の資金繰り状況を銀行に報告するとともに、資金繰り表にて、今後の融資を受けたい時期、融資を受けたい金額を事前に銀行に伝えておくという目的があります。

★ぎりぎりでの融資申込みがなくなります。だいたい、融資を受けたい月の3カ月以上前から、資金繰り表を使って融資の話をしておくイメージでしょうか。

企業によっては、今後の1年の融資希望として、1年先の融資の話をしているところもありますが、そこまで資金繰り表に基づいた銀行との話ができるのは、とても理想的なことです。
このように、余裕を持って融資の話ができると、企業としては余裕を持って資金繰り対策ができるし、銀行もじっくりと融資を検討しやすいので、これが銀行との関係を円滑にできることにつながっていきます。

 

(18)リスケジュールにあたって担保提供必要?

<質問>

3年位まえに、リスケジュールを取引銀行に申し入れましたが、所有不動産の中に長男の嫁名義の建物があり、それを担保に入れないと保証協会が話に乗ってくれないとのこでした。ですので、長男と嫁に相談したら担保提供はできないとのこと。それから銀行と何回も交渉しましたが、保証協会が、うん、といってくれないとのことで、話が進展しませんでした。そこで昨年12月より今年の3月まで支払いを延滞しました。今年の4月に入り銀行よりリスケジュールの話があり、5月より1年間のお話でした。ただいま実行中です。今後どうしても、嫁名義の建物は担保提供、しなくてはいけないでしょうか。

<回答>

結局はお嫁さん名義の不動産を担保に入れなくてもリスケジュールを行ってくれたということで、リスケジュールを更新していくにしても、その時に担保として差し入れる必要はないでしょう。
ただ今後もずっと返済金額を少しずつでも増やしていかない中でのリスケジュール更新は、銀行や保証協会も納得しないでしょうから、早急に利益体質を作っていき、少しずつでも返済額を増やしていけるようにしていく必要があります。

 

(19)他行のリスケジュール交渉状況を聞かれたら?

<質問>

本日、自ら銀行に、リスケジュールをお願いに上がりました。
政府系金融機関のNさんはその場で大丈夫のようでしたが、他の銀行は他行の様子を見ながら考えましようとのことでした。その時に保証人さんをつけてもらうかもしれませんよ、またNさんはいくらでリスケジュールして下さいましたと告げたのがいいですか?

<回答>

リスケジュール交渉を行っている銀行に、他行の様子を聞かれたら、他行がリスケジュールに合意してくれていたらその事実を伝えて、あなたの銀行もやってほしいと促してもよいでしょうが、気をつけなければならないのは、その他行のリスケジュール金額が中途半端な場合です。
経営者自らリスケジュールを行うと、例えば毎月の返済金額100万円を50万円にする(本来なら返済を0円近くにするまで粘り強く交渉をするべきなのに)ような中途半端なリスケジュールをしがちです(50万円にしたところで返済を続けられるのですか?)。
そのような場合に正直に伝えると「ではうちも50%カットでよいですね。」とその銀行においても中途半端なリスケジュールをされがちなので、他行のリスケジュール交渉の状況を言うことはケースバイケースで考えなければなりません。他行が中途半端なリスケジュールであれば、いっそのこと「0円近くで合意できそうな感じ」とでも言っておいた方がよいでしょう。

 

(20)リスケジュールをやっているのに資金繰りが苦しい

★ざっと、弊社にお電話いただく方の3~4割は、すでにリスケジュールを実行済の中での、それでも資金繰りが苦しいというご相談です。

多くの企業では、毎月の銀行への返済負担が重いのであり、その返済を0円近くにまですると、普通であれば資金繰りは楽になるはずです。

しかし、リスケジュールを行うと同時に、事業の赤字を黒字化対策を行なっていません。
資金繰りが苦しい会社の6~7割が、このパターンです。

残りの3~4割はリスケジュールを行っても返済金額の減額が、十分にできていない、ということろにあります。
例えば毎月300万円の返済をしていたとして、それを、銀行と交渉して毎月100万円の返済に抑えてもらったとします。
しかしそれでよいのは、毎月100万円以上の現金が生み出されるほど、利益を出している会社です。ということは、毎月100万円の返済に抑えるとすると、200万円の減額ということで一見、良さそうに見えるのですが、実は不十分だ、ということになります。
銀行と粘り強い交渉を行い、0円近くにまで返済を抑えるべきだったのです。

大事なのは経営者の「あきらめない気持ち」です。

リスケジュールを行っても資金繰りが苦しいと、「やることはやった。」と思って、経営をあきらめ、つまり破産などの法的整理を選択しがちですが、リスケジュールはやっても、会社を立て直すための対策をあまり行っていない企業が実に多いとよく感じます。
本当に、抜本的な対策を立てて実行していかないと、このような企業は生き残っていけません。
いつ経営者が、開きなおって、再生への道を歩むことを決断するか、です。

 

(21)得意先係行員からいろいろなことを要求されている

<質問>

弊社 数十年の取引であるメイン行A銀行と、数年の取引であるサブ行B銀行、C銀行、の三行取引です。
今回、B銀行より、御社との取引(融資)で、銀行が儲かっていない(旨みがない)ので、何とかしてほしいと言われました。
具体的には、投資信託を買ってほしい、当行の預金口座にもっと入出金してほしい、担保を入れてほしい、信用保証協会の融資を使ってほしい、積立を増額してほしい(現在は月々10万)などなど要求されました。

応じてくれないのなら、お付き合いが太くならないうちに別れたほうが...という勢いでした。
現在 3000万円の当座貸越と 手形貸付枠2000万円です。
当貸は500万円~3000万円の間で使っています。今月は500万円だけです。
手貸はたまに使いますが、今月は使っていません。9月末と3月末はお付き合いで当貸3000万円MAXまで借りています。金利は1.5%~1.9%ぐらいです。

たしかに儲からないかもしれませんが、得意先係から、手を引くぞというようなニュアンスの発言には困惑しました。
私自身は、銀行から借りてやっているなんていう態度はとっていないつもりです。
立場の違う融資係から言われるとか、儲かってないので金利を上げさせてほしいとか言われるのなら理解できますが・・・
このような少し強引と思うようなやり方はありえる範囲でしょうか?
このような態度からなにか銀行側の狙いが見えますでしょうか?

<回答>

銀行内で、銀行の収益を増やす役割を持つのは、得意先係です。融資係の役割は貸倒れを作らないことが第一なので、収益を増やすために、融資先企業に、ああしてほしい、こうしてほしい、というようなことは言わないでしょう。だから、得意先係の行員から、ご質問内容にあるようなことを言われるのは自然です。
また銀行は、1社1社の融資先において、融資取引以外に、どんな取引があるのか、またその融資先からもたらされる利益はトータルでいくらか、というデータを出しております。それで、B銀行はあなたの会社との取引は細く、また利益もあまりないので、ご質問内容にあるようなことを言ってきているのでしょう。おそらく得意先係行員が、その上司や支店長などからきつく言われていることと思われます。

このような得意先係行員の要求を全て断わっても、融資自体引き上げようとすることは、あなたの会社の業況が悪くないかぎりは、やってこないでしょう。利益がマイナス(例えば、あなたの会社において当座貸越や手形貸付から銀行が得られる利息収益から、調達コスト・社内経費などを除いた利益がマイナスになる場合)になるのであれば、銀行が考えるべきことは、当然金利の引き上げであり、その前に融資の引き上げは、順番が違います。

上司から、あなたの会社からもたらされる利益を増やせと言われているのと、投資信託や信用保証協会保証付融資のノルマ達成を言われているのが重なって、そのプレッシャーから、あなたの会社に対していろいろ要求しているのでしょう。
特に無視してもかまいませんが、得意先係行員に少し花をもたせて今後のコミュニケーションをスムーズにするという観点から、少しぐらいは何か、付き合ってあげてもよいかもしれません。

 

・リスケジュール更新時に敷金・保証金を担保に入れてほしいと言われた

<質問>

2年前にリスケジュールを各銀行にお願いしました
・日本政策金融公庫・担保あり
・地元地銀T銀行・担保あり
・地銀S銀行・担保なし
・都銀M銀行・担保なし
それぞれに対応してもらいました今年もう一年我慢すればリースなど終わるので、この1年だけは元本0円で利息のみの返済にできないかと、都銀M銀行に話をしたところ、賃貸の敷金、保証金を担保にしてくれと言われました。 敷金、保証金等は担保提供する必要があるのでしょうか。もともとはM銀行はビジネスローンでしたので、当然担保は、いらなかったのですが・・・

<回答>

銀行は、リスケジュールの申込時や、更新の申込時に、追加の担保や保証人を要求し、保全(もし貸倒れとなった場合の補てん手段)を少しでも確保しておこうと考えるものです。
ただ、それら担保を追加してくれと言われても、突っぱねればよいです。

銀行は、あなたの会社や、経営者個人の資産などから、担保となりそうなものを探します。あなたの会社において、担保として追加できそうな不動産や預金などはなく、だから敷金や保証金に目を付けてきたのでしょう。銀行の言うことを聞く必要はありません。
言い方としては「大家さんが、敷金や保証金を担保に入れるのを嫌がる」とでも言っておきましょう。

 

・金利の分割支払い交渉、再リスケジュール交渉は可能か

<質問>

広告・印刷関係の会社です。
今年の一月より銀行返済のリスケジュールを行っています。
当時、法案が通った直後で弁護士より書類を作ってもらいました。金利は払う状態だったのですが引き落としはされてない状態でした。
銀行担当者からは今まで手続きがかかってしまったが銀行内部では通り、保証協会も通るでしょうとのことですが半年分の金利を現金で払ってほしいとのことでした。

リスケを行い半年で出た利益は昨年未払いの社会保険・税金の支払いに充ててしまい半年分一括で支払えば社員の給料遅配を起こしかねません。 当社の現状の返済能力は元金、利息込みで本来の四分の一程度です。それくらいに抑えて頂けたらなんとか運営し返済も可能です。
銀行からは他には払ってうちには払ってもらえないのですかとのことですがなんとか当社の現状を理解していただき半年分の金利を分割、また上記のように再リスケを行いたいのですがどのようにすれば銀行に納得してもらえますでしょうか?

<回答>

金利は分割で支払いできるように交渉してみましょう。銀行の方では、未収利息という勘定であがっているので、それを分割で支払うことによって、内入していくという形になります。無理ない支払いができる範囲で、支払い計画と資金繰り表、経営改善計画書(これはリスケジュール交渉時に提出しているでしょうが)を持っていきます。

また他の方法で、リスケジュールによって抑えた毎月の元金返済金額をさらに抑える、再リスケの交渉を行うことは、一度は減額した返済金額をさらに抑えるということで、交渉に困難は伴いますが不可能ではないです。
交渉方法は通常のリスケジュール交渉と変わりません。
ただやはり、最初のリスケジュール交渉時に、無理のない支払い金額を算出してから交渉にいどみたいものです。

 

・リスケジュールは短期融資と長期融資で違いがあるのか

<質問>

借入金返済のリスケジュールに関するご質問です。
当社は、製造業で年間売上300百万円、短期借入金35百万円、長期借入金が65百万円あり、短期借入の約定返済が月1,800千円、長期借入の約定返済が月1,100千円あります。借入れ先は信用金庫と公的金融機関です。
既存借入金のみでも毎月のキャッシュフローからの返済が難しい状態ですが、起死回生を図るため、この度取引先で社長が高齢のため廃業する会社から高収益事業部門の譲渡を受け、売上・利益拡大を考えています。

機材、材料費等事業買収のための資金が約6百万円必要であり、公的金融機関に新規事業のための融資を申し込みましたが断られました。 メイン銀行である信用金庫に既存借入金返済対策と新規事業資金確保のため借入返済のリスケジュールの相談をしたいと考えています。 借入金残高は、公的金融機関は約1,000千円で他はすべて信用金庫1行です。
新規事業と経費削減で当面1年を乗り切れば売上・利益が回復し現在の約定返済は可能と考えています。

質問の内容
  • 1.どのようなストーリーでリスケジュールの相談をすればいいのか?
    リスケジュール申し込みの留意点
  • 2.短期の約定返済のリスケと長期の約定返済のリスケはどのように違うのか?
    金融機関は短期貸付のリスケと長期貸付のリスケはどちらがやりやすいのか?
    短期資金のリスケと長期資金のリスケは今後の当社の信用格付に差はあるのか
以上ご教示お願いします。

<回答>

借入額は月商4ヶ月分と、そんなに多いとも感じないのですが、公的金融機関から断られたのは、はたして新規事業が評価されなかったのか、御社の財務内容に問題があったのか、その判断が必要です。

新規事業資金としては融資は断られても、通常の運転資金であれば融資が受けられるのかもしれないですし、また取引されている信用金庫でも運転資金の融資が受けられるかもしれません。リスケジュールの判断は、それらでも融資が受けられない場合に行うべきです。

リスケジュールを行う場合、返済条件変更申込書と経営改善計画書、資金繰り表をもって金融機関に相談にいきます。今は返済できないから見守っていてほしい。しかしこの経営改善計画により利益を出せるようにし、返済を再開できるようがんばります、というのがリスケジュールのストーリーです。

また短期融資と長期融資のリスケジュールに違いはありません。 どちらも行ってください。どちらか一方だけリスケジュールを行う、という中途半端なことは行わないでください。

 

・リスケジュール後の方向性

・事業で稼ぐ現金(キャッシュフロー)をCFとして表すと、毎月の資金繰り(単位:万円)が次のような企業があるとします。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
事業活動で、毎月100万円の現金が流出し、さらに銀行への返済が毎月400万円あり、毎月500万円ずつ現金(手元にある現金・預金)が減少していっています。

上記のような状況では、事業が赤字ですので、銀行は融資を出さないことが多いでしょう。
その場合は、毎月の返済を抑える交渉、つまりリスケジュール交渉を銀行と行います。それで、資金繰りがだいぶ楽になるようになります。

例えば上記例で、リスケジュール交渉により、毎月の返済金額400万円を0円にまで減額できると、次のようになります
CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100

・しかし、安心してはいけません。毎月のCFを黒字に転化し、そしてCFを多くしていく、つまり事業を改善していって利益を多く生み出すことにより、現金を多く生み出せるようになり、早く返済を元に戻すことができるようにしていかなければなりません。

手元の現金を最低月商1ヶ月分、理想は2ヶ月分、ためるまでは、返済金額はできるだけ上げていかないよう、銀行と交渉します。
なぜ銀行への返済を増やしていかず、手元の現金をためていくべきなのか。
それは、経営の安全性を高めるためです。
手元に現金が豊富にある状態であれば経営者としては余裕を持った経営ができますし、投資すべきところに投資を行うことができます。

 

・次の表は、毎月のCFが△100万円→+100万円と改善し、毎月100万円ずつ、現金をためていくことができている状態です。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
そして、手元に現金が十分たまっていったら、返済をじょじょに再開していくようにします。
上記の状態であれば、毎月0円→50万円ぐらい、返済を再開しても問題ないでしょう。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
そして、さらなる事業の改善により、CFを500万円まで改善できたとします。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
  ↓
一部再開 100 △50 +50
  ↓
もっと改善 500 △50 +450
そうすると、完全に返済を再開することができます。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
  ↓
一部再開 100 △50 +50
  ↓
もっと改善 500 △50 +450
  ↓
完全再開 500 △400 +100
イメージできますでしょうか。これが、銀行にリスケジュールを行った後、企業として目指すべき方向性です。

現実は、こんなに劇的に経営を改善できるものではないですが、理想を追い求めるのは経営者の役目でしょう。

 

・資金調達とリスケジュール

資金調達とリスケジュール(融資の返済金額減額や猶予)、どちらをやったらよいか。

金融円滑化法により、企業においてリスケジュールという手法は一般的になり、多くの経営者が、抵抗が少なくリスケジュールを行うことができるようになりました。
しかし、リスケジュールを行わずに、通常通り返済を続けられるのならその方がよいのです。
リスケジュールを行うと、やはり企業としては、一歩踏みこんだことになるのです。

リスケジュールは、全銀行一律に行うことが鉄則ですが、リスケジュールを行うと、リスケジュール期間中は融資を受けることができません。

そもそも、現状、銀行から融資が出ない状態でリスケジュールを行って融資が出ないといってもそれは問題ないですが、現状、銀行から融資は出る状態であるのにリスケジュールを行って融資が出なくなることが問題なのです。
だから、銀行から融資は出る状態であるのに、リスケジュールを行うという選択はありえないわけです。

銀行から融資が出ず、一方で通常どおり返済を進めると資金繰りが厳しくなるからリスケジュールを行うわけで、融資は出るのにリスケジュールを行うのは間違っています。
企業としては、そこを間違って判断してはなりません。!

 

・銀行から融資が少しは出る場合のリスケジュール判断

・次のようなケースもあるでしょう。銀行から融資は出るが、融資でいっぱいいっぱい出る金額より、返済負担の方がずっと大きいケースです。

企業が現金流出するのは事業赤字と融資返済ですが、事業がトントン、つまり事業で流出する現金は0とし、毎月融資返済が500万円ある場合。
毎月現金が500万円流出し、年間6,000万円流出してしまうので、このような企業は年間を通じて6,000万円を調達する必要があります。 ただ、いくらがんばってもせいぜい2,000万円しか調達できない場合、どうしたらよいでしょう。

その場合、さっさと2,000万円を調達して、調達して少し経ってからリスケジュール交渉をスタートする、というやり方になります。

企業としては、一番手元に現金が残るやり方を考えるべきです。

資金調達を行うと同時にリスケジュール交渉を行うと、銀行から見たら「はじめから返さない気だったのか。」と見られてしまうので、融資を受けた銀行においては2、3回返済してからリスケジュール交渉、一方で融資を受けられない銀行にはすぐにリスケジュール交渉を行って返済金額を0円近くにすることが、企業の手元により多くの現金を残すことになり、有効となります。

そして、事業が赤字であればすぐに利益向上対策をとり、なけなしの現金を減らしていかないようにしなければなりません。

 

・既にリスケジュールをしているので新たに借入できない場合

中途半端なリスケジュール、つまり元金返済が一部しか減額されていなかったりしていませんか?


『正常な運転資金』の部分は元金ゼロにしてもらうようしっかり交渉しましょう。

  • ★リスケジュール期間は、手間がかかりますが3~6ヶ月と短目にしてみて、できるだけ銀行と交渉する時間を増やすようにしましょう。コミュニケーションの頻度が、あなたの会社を救う機会になります。
  • ★また、資金繰り安定のための金利引下げも積極的に交渉しましょう。 資金繰りが良化すること、間違いなしです。

では、『正常な運転資金』でない運転資金の場合はどうでしょうか?


ここは、最長3年間の元金据え置きを依頼してみましょう。

  • ★その間に、事業を立て直し、適正な利益を出し、返済開始を実現しましょう。

    3年間の時間があれば【必ず事業を再生します】と、銀行で言えるくらいの決意を持ってください

 

・リスケジュールにおいて銀行ごとにいくらずつ返済するか

・リスケジュール(返済条件変更)を申し込んだ後、かならず問題となるのが「各銀行に毎月いくらの返済をするか」という問題です。

今回は、各銀行への返済額を決める方法について説明します。

具体的な手順
手順1 今後の収入と支出を冷静に判断して計算する。

手順2 計算した収入と支出にもとづいて毎月確実に返済できる返済総額を計算する。

手順3 返済総額を各銀行に配分する方法を決める。

手順4 各銀行との個別交渉に入る。

手順1 今後の収入と支出を冷静に判断して計算する。

1)現状の収入額と支出額を表に書き出す。
2)次に当面1か年の予想資金繰り表を作成する。

綿密な経営改善計画を作成することから始めるのがベストです。
しかし実際には時間的な余裕もなく、作成方法もわからずにいる企業がほとんどです。
資金繰りは待ってくれません。スピードがもっとも大事な問題ですので、銀行側にその旨を正直に伝えて、後日改めて綿密な経営改善計画を提出することで了解を得ます。
まずは資金繰りがわかる資料を作成して現状を把握することから始めましょう。
手順2 計算した収入と支出にもとづいて毎月確実に返済できる返済総額を算出する。

作成した収入と支出にもとづいて、実際に返済できる金額を決めましょう。
一度変更した後で、再度減額を申し込むことは信用の失墜となります。
よって確実に返済できる金額を銀行に提示することが大事です。

次のことを考えて返済額の目安とします。
  • 1)経常的な年間の返済財源は、「年間利益+減価償却額」が上限です。
    設備維持にかかる投資資金や、優先して返済しなければいけない資金を差し引いた金額以内を返済財源と考えましょう。
    • 2)資産処分等の返済財源がある場合は、処理できる日時に十分余裕をもたせて返済計画に組み入れましょう。
      • 3)現預金が月商の1か月分もないことは経験則上異常な状況です。
        また今後の銀行調達ができないことを考えれば2か月分あっても少ないぐらいです。
        十分な現預金ができるまでは思い切って元金据置の返済を依頼することも一つの方法です。
手順3 返済総額を各銀行に配分する方法を決める。

案分方式(プロラタ方式)で算出するのが基本的な考え方です。
具体的な案分方式の計算式は次の様になります。

(案分計算の具体例)  X銀行 債権額 1,000万
Y銀行 債権額 2,000万
Z銀行 債権額 3,000万
総債権額     6,000万

毎月返済可能財源  6万
毎月返済可能財源×(X銀行債権額÷総債権額)=X銀行への毎月返済額→6万×(1,000万÷6,000万)=1万

毎月返済可能財源×(Y銀行債権額÷総債権額)=Y銀行への毎月返済額→6万×(2,000万÷6,000万)=2万

毎月返済可能財源×(Z銀行債権額÷総債権額)=Z銀行への毎月返済額→6万×(3,000万÷6,000万)=3万
手順4 いよいよ各銀行との個別交渉に入りましょう。

銀行側は少しでも多くの返済を要求してきます。

あくまでこちら側主導で決定していくことが大事です。

こちら側主導でないと、各銀行がそれぞれに主張する金額や根拠に惑わされていつまでたっても調整できない状況となってしまいます。
本来ならばメインバンクがその役割をするのが筋でしょうが、中小企業や個人事業主に対しては、そこまで動いてくれないのが実情です。
公平な立場から各銀行の調整をしてくれるどころか、メインバンクだからと債権者側の権利だけを主張するひどいケースもあります。

リスケジュールのさまざまな返済額算出根拠

(ア)債権残高で案分する。
先ほどの例で説明した案分方法です。
もっとも基本的な方法であり、この方法で進めればたいていの銀行は納得します。
下記の(イ)~(オ)の方法はかなり高度な交渉力が必要となりますので、一般の方にはお勧めはできません。
しかし債権者側からは自行の取り分を少しでも多くしようと「屁理屈」のように使ってきますので考え方だけは知っておきましょう。
(イ)担保で保全された額を除いて案分する。
つまり無担保部分を優先して返済する方法です。
担保で保全されている部分は確実に回収できるので、後回しで返済するという考え方です。
弁護士等が介入して配分するときによく利用する方法です。
無担保の銀行等がよく主張する方法です。
この方法を主張してきた場合には、担保処分で返済するのではなく、あくまで毎月の収入での返済を前提としていることを言って理解してもらいます。
(ウ)当初の返済金額により案分する。

先ほどの例で説明した案分方法を「債権額」でなく「毎月の返済額」で案分計算する方法です。たとえば、X銀行の返済額は次の様に決まります。

(案分計算の実例)
X銀行 当初の毎月返済額 
Y銀行 当初の毎月返済額 
Z銀行 当初の毎月返済額 
当初の毎月返済総額

毎月返済可能財源


20万
30万
40万
90万

6万

毎月返済可能財源×(X銀行の当初毎月返済額÷当初毎月返済総額)=X銀行への毎月返済額→6万×(20万÷90万)=13,333円
(エ)それぞれ借入金1本ごとに同額の返済金額とする。

これは次の様なケースでよく利用します。

  • 1)少額の返済額を提示した時に便宜上採用する。
  • 2)借入金の種類上、1万以上の返済額を設定する方法をとるしかない場合。
    たとえば、制度融資(保証協会付)や一部の保証会社付融資でこのケースがあります。
    多くは、債権者側の交渉条件というよりも制度上やむをえない事情からです。
    理由を聞いた上で各行の理解を得て了解しましょう。
    ただし将来返済金額が大きくなってきたときには案分方式にかえてゆきましょう。
(オ)返済財源を考慮して検討する。
当初の返済財源を考慮して変則的に返済財源を決める場合があります。
たとえば、当初に特定の売掛金や未収入金の回収を返済財源としていたときには、その分をそのまま充当する場合があります。
もちろん他行の承諾はとっておくことが前提です。
そして充当後の残額分のみを各銀行で案分する方法です。
しかしこの方法は各銀行の同意が得られなかった場合に長期間もめる原因にもなりかねませんので要注意です。

■リスケジュールの各銀行との個別交渉

当初の返済条件を変えなければならなくなった事態を招いたのはこちら側の責任ですので、まずは詫びることが大事です。
この姿勢は最後まで忘れてはならないことです。
しかし、一方で今後の返済を行っていくのはやはり自分側であることは間違いないことです。
最後まで返済に責任を持つという意味でも、自分自身が主導的になって返済方法を提案していくことが大事なことだと思います。

 

・リスケジュール中に新規借入ができる方法

■新規借入が再びできるようになるために、いうまでもないのは、リスケジュールを行う前の返済条件に戻すことですが、この厳しい経済状況下で、そんなことは不可能に近いと思われます。
ただ、そこまでの状態に戻さなくても新規借入をできるようにする方法がありますので、具体例を用いて説明をいたします。

(具体例)

Y社の場合 (現在元金棚上げ利息のみ支払い中)

プロパー融資 保証協会付 残高計
A銀行
B銀行
C信金
合 計
4,800万円
1,200万円
0
6,000万円
4,200万円
1,500万円
300万円
6,000万円
9,000万円
2,700万円
300万円
12,000万円

1.保証協会付融資分の返済開始

まず保証協会に行って保証協会付融資分の正常化を図りたいので、保証協会付融資分の返済を始めたい旨のご相談をしてみて下さい。

以前なら運転資金の返済期間は最長で通常5年でしたが、資金繰り円滑化借換保証(借入を一本化し返済期間を最長10年まで延ばせる制度)導入後、運転資金であっても10年の返済期間でみてくれる場合が多くなりました。
上記具体例の場合、保証協会付融資分の合計6,000万円を120回で除してみて算出される金額、月50万円の返済をC信金にて交渉してみます。
(なぜC信金を窓口にするか。C信金は保証協会付融資のみなので、返済を開始するにあたって話がしやすい)

→6カ月間滞りなく返済をすることができれば、保証協会はY社の保証協会付融資について正常に戻ったと判断します。
2.A銀行及びB銀行融資分の返済
1で保証協会付融資分の返済実績を積み上げられれば、A銀行及びB銀行のプロパーの借入金について、各120回で除した金額の返済を開始する
交渉を各銀行として下さい。また、C信金からの借入残高は6カ月経過した時点で0円になりますので、A銀行及びB銀行からの保証協会付融資分についても資金繰り円滑化借換保証を使って一本化するか、それぞれ120回で除した返済金額を返済するように交渉をして下さい。
3.新規融資の実行
1の返済を開始し始めて1年後あたりには保証協会付融資が実行されることが、私の経験上では多いです。
(当然のことながら、企業の経常利益が黒字化されていることと融資実行時点ですべての借入金が少なくとも120回で除した金額分の返済が開始されていることが条件になると思われます。)

(留意点)
ただ、この手法を使うと正常化に向け返済は進めたもののその後予想に反して業績が悪化して新規融資が実行されない場合などは、今まで以上に資金繰りが厳しくなるというリスクを秘めています。
経営者の方に経営改善計画をきちんと履行できる手腕がないと安易にお勧めはできませんので、慎重にご検討をされた方が賢明です。

 


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