(20)売上でなく利益で考える商売人の体質

個人事業主であれ、会社経営者であれ、商売人にとって大切な視点は
事業の成否を"利益"で考えることである。
 

その算式は「利益=売上-経費」という単純なものだ。しかし多くの事業者は「売上-経費=利益」という頭で商売をしている。つまり、利益を先に考えるか、後に考えるかの違いだが、それによって商売のやり方は大きく異なる。わかりやすい例として、A、B二人の商売人のケースで考えてみよう。

《●Aさんの商売スタイル》

Aさんはまず最初に「いくらの利益を稼ぎたいのか」をイメージして自分の商売を組み立てるタイプだ。そのためにはいくらの売上が必要で、経費がいくらかかるのかを試算する必要があるが、その答えは何種類もあることに気付いた。仮に、年間1千万円の利益を目的とする場合なら、以下のようなプランだ。

(1)5千万円の経費を使って6千万円の売上を得る商売=1千万円の利益
(2)1千万円の経費を使って2千万円の売上を得る商売=1千万円の利益

いずれも「1千万円の利益」を達成しているが、どちらの稼ぎ方が賢いかといえば(2)であることは一目瞭然だ。そこでAさんはできるだけ経費がかからない商売のテーマを選ぶことにした。そこでわかったことは、「経費のかからない商売=利益率が高い商売」ということだ。

《●Bさんの商売スタイル》

Bさんは大手企業に勤めていたサラリーマン時代には社内で"やり手"として知られ、数十億円単位のプロジェクトを任されてきた人物。自分の能力に自信を持って脱サラをした。元同僚からケチな商売人になったとは思われたくないこともあり、創業初年度から"年商1億円"を達成する会社を作ろうと決めた。そのために、社員も雇って立派なオフィスも借りた。持ち前のド根性もあって、1年後には目標どおりに年商1億円を達成することができたが、経費がかかりすぎてしまったために収支は赤字で、社長である自分は無給のまま働き続けている。

しかし売上の額は大きく、オフィスでは若い社員がキビキビと働いているため、会社の台所事情までは知らない昔の同僚達からは"成功した"と羨ましがられている。

【商売で損をする人としない人の特性】

AさんとBさんとの比較では、商売に対する考え方が大きく異なっている。 Aさんの場合には、あくまで「手堅い利益を得ること」が商売の目的であり、それを達成するための投下するコストは少ないほど良いと考えている。
そのため彼はどんな状況でも、商売で損をすることがないのだ。
一方、Bさんの場合には商売に対して様々な付加価値を期待している。上昇気流に乗ることができれば、短期間での株式上場も夢ではない。しかし、大きな夢を追いかけるあまり、自分の読みが裏目に出た時には大きな損を出してしまう。

AさんとBさんとの違いは「商売理念」によるもので、優劣の差を付けることはできない。独立起業の目的を「大富豪になること」に設定するのなら、Bさんのようなやり方でチャレンジするのもよいが、「月収100万円の生活を安定的に維持すること」が目的であれば、Aさんのように"損をしない商売"を追求する発想が大切になる。


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