(19)ビジネスの規模によって変動する損益分岐点
★商売人の中でも「売上は多いほど良い、会社は大きくなるほど良い」と信じて疑わない人が少なくないが、それが「儲かること」とは必ずしも一致しない。
わかりやすい身近な商売として「飲食店の開業」による独立プランで考えてみよう。脱サラをして飲食店を開業しようとする場合には、まず店の立地とサイズ(店舗面積)から物件を決めることから始める。繁盛店にするためには、できるだけ好立地であることが望ましいし、店舗面積が広いほど多くの席数が取れて一日の売上も高額が狙える。しかし店の規模が大きいほど月々の家賃や人件費、食材の仕入れにかかる経費は大きくなるため、店を黒字化するための損益分岐点は高くなる。
店の規模によって異なる月額経費の試算例 | |
●20坪の店舗にかかる 月額経費 |
・材料費...............60万円 ・人件費...............50万円 ・諸経費...............24万円 ・店舗家賃............20万円 ・減価償却............10万円 経費合計......... 164万円 |
●30坪の店舗にかかる 月額経費 |
・材料費...............90万円 ・人件費...............70万円 ・諸経費...............36万円 ・店舗家賃............30万円 ・減価償却............15万円 経費合計......... 246万円 |
20坪の店舗を月20万円の家賃で借りるのと、30坪の店舗を月30万円で借りるのとでは、家賃の金額では月10万円の差でしかないが、店の規模に連動して他の経費も増えるために、最終的な損益分岐点では大きな差が生じてくる。
損益分岐点とは
店の維持にかかる経費と売上高とが均衡するポイント(赤字でも黒字でもない利益ゼロの地点)
従業員が三十名いるベンチャー企業の経営者と、個人事業のSOHOではどちらが成功者としてのイメージが強いかといえば前者であるが、「どちらが潰れにくいか」といえば迷うことなく後者である。これは手掛ける事業の規模によって損益分岐点に大きな差があるためだ。
開業当初に高い損益分岐点(必要以上に大きな規模の店)を設定してしまうと開店から1年経過した頃から売上がジリジリと落ち込んで赤字続きとなってしまう。
逆に、最初から損益分岐点の低い店が口コミで人気化して繁盛すると、店前に行列ができるなどして客には迷惑をかけるが、店の経営としては儲かる。そのため「こだわりのラーメン屋」のように"本当に味のわかる客=ロングテール"だけを相手に商売をしたければ、できるだけ店には金をかけずにローコスト経営に徹することである。
逆に、最初から損益分岐点の低い店が口コミで人気化して繁盛すると、店前に行列ができるなどして客には迷惑をかけるが、店の経営としては儲かる。そのため「こだわりのラーメン屋」のように"本当に味のわかる客=ロングテール"だけを相手に商売をしたければ、できるだけ店には金をかけずにローコスト経営に徹することである。